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ミイラ男■南雲晴矢
「あはは、」
「何なんだよ、一体これは…」
「え?ミイラ男?」
「何処がミイラ男だ、ただ包帯巻かれてるだけじゃねえか!
しかも包帯が足りないからって、残りはトイレットペーパーって…ふざけてんのかよ!」
所詮、ハロウィンはお遊びのようなものだ。
ふざけて何が悪い、そう笑いながら答えると、南雲は既に呆れ顔で、わたしをまるでいたい子を見るようにして見てきた。
失礼な、わたしの頭はまだまだいたって正常だ。
強いて言うなら、子どものように感情が豊かで可愛らしいとでも言っておこう。
「お前がいきなり家に来るっていうからよ、一体何事かと思ったら…」
「ハロウィンといえば仮装でしょ!」
今日の朝、突然思い出したものだから、あまり準備が出来ていなくて。
ドラキュラとかね、いろいろ考えたんだけど。
「ミイラ男が一番かなあと」
「いや、めっちゃマイナーだろ
かっこいいとか、そーいうの一欠片も持ち合わせてないと思うぜ?」
「何言ってんの南雲、一番楽だからに決まってるでしょ」
「………………お前はそういうやつだと思ったよ」
わたしは家にあった包帯と、少しのジョークと出来心でトイレットペーパーを持って、南雲の家へと押し掛けた。
もちろん、南雲の反応が見たかったからだ。
案の定、南雲の驚いた顔が出迎えてくれた。
ちなみに今日は、わたしたちが付き合って二ヵ月の記念日らしくて、南雲は律儀にプレゼントとお菓子を用意して待ってくれていた。
ごめん、忘れてた。
なんかさ、わたしより南雲の方が乙女なんだよね。
「…ミイラ男っていうよりさ、ファラオだよね」
「お前がやったんだろ」
「おとなしくやられてくれる南雲も南雲だよ?」
「…うっせえ」
自分でいうのも何だけど、南雲は何だかんだ言って優しい。
頭はチューリップだけど。
「…今、失礼なこと考えなかったか?」
「ぜーんぜん」
「あやしいぞ」
「…南雲は優しいね、って思っただけだよ」
「…そうかよ」
「あはは、南雲照れてるー」
「わ、わるいかよ」
「ぜーんぜん」
愛する人に、悪戯を!
こんなわたしに付き合ってくれる晴矢も物好きだよね
い、今名前…?!
あはは、ピュアだよこの子
電波っぽい彼女と、初々しい南雲くんイメージ!
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