*甘凌現パロ
*甘寧→大学行かずにアルバイト
*凌統→四年生大学で一人暮らし
*二人は恋人未満でも同居中

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「うー…っ…さみぃ…」

もらった合い鍵を回して、鍵のかかったアパートの一室に入る。
時間はとっくに日にちを跨いだぐらいで。

「こんな時間までかかるとは思わなかったぜ…。…凌統は…寝てるだろうな…」

バイトの仲間から飲みに行こうと言われ、折角誘ってもらったものを断るのも何かと思い、一つ返事で了承した迄はよかった。
一応、成人したとはいえ…明日も当然のようにバイトはあるし、朝も早いし、そんなにも遅くはならないだろうと思っていた。

が、そんな事はお構いなしに友人たちは酒を飲み、カラオケに行き、次は○○の家で飲み直しだー、とか言って容赦なく連れ回された。
自分は酒に強い方だし、何より早く帰りたいという思いから何とか三次会を脱出する事に成功。
そして、もちろん終電なんか有るわけもないのでこの寒い夜の中、徒歩で帰宅した…と言うわけだった。

「あ゛ー…寒すぎる、眠い、だが寒い、から風呂に入る…」

寝ている同居人兼恋人(予定)を起こさないよう、極力物音を立てずに、俺にしては珍しく静かに風呂場に向かった。






「…っても、どうせ風呂沸いてねぇし…今から沸かすのも面倒だし…寒いが、シャワーで我慢すっか…」

出来ることなら、温かい湯に浸かって体を一気に温めたい。そしてそのまま布団に入り、ゆっくり寝たい…。…しかし現実は厳しくて、とうに冷め切ったお湯(だったもの)がバスタブに張られている…はずだった。

脱衣所で服をすべて脱ぎ捨て、タオルを一枚取り風呂場の扉を開ける。
さっさとシャワーを浴びなければ…と飛び込むように入ると、

「ぶぁっ…!?」

視界が湯気に覆われ、情けない声を上げてしまった。

「………湯気?」

お湯は冷め切っているはずなのだから、湯気なんてこんなに立つ訳がない。ならばこれは何なのか。
まさか…と思い手をお湯に付けてみる。

「…あったけぇ…」

まるで、沸かしたてのように温かいお風呂がそこにあった。
何故、と不思議に思ったが、寒さの限界に達し急いでシャワーを浴びる。
体もそこそこに洗い、何故かいつもより緊張しつつも足からゆっくりと風呂に入った。

「…っあー……」

肩まで浸かると、体全体にじわじわと熱が広がる特有の快感を味わい、暫し目を閉じて至福の時を過ごす。
手で湯を掬いながら顔を洗い、先ほどからの疑問だった“何故湯が沸いていたのか”を考え始めた。

同居人がすぐ前に風呂に入り、まだ温かいままだった?
違う。あいつはその日の内に風呂に入る奴だから、俺が帰るまでに湯は冷め切ってしまう。

ならば、自分が帰ってくる頃を見計らい、もう一度沸かしてくれたのだろうか?
性格から考えて、かなり珍しいことだが…もしそうならばかなり嬉しい。

「…明日、起きたら聞いてみっかな…」

答えてくれるかはわからないが、それでも自分がこうして温かいお風呂に入れたことは事実。




愛しい人がくれた優しさに、心まで温かくなっていくのを感じながら、俺はこの至福の時を過ごしていった。


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