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溶け出すメロウ



 着信を知らせるメロディーで、やすは目を覚ました。無機質な音が室内で木霊する。起きたばかりの彼は眠気眼のまま枕元をまさぐり、音源の携帯電話を探した。すぐに指先に当たった硬さが、今探しているそれであると確信した彼は、慌てて開き通話ボタンをプッシュ。「もしもし」、寝起きの所為で声が掠れる。くすくす笑いと共に漏れてきた声はとても耳に馴染む声で、ディスプレイを見ずとも相手の特定は簡単だった。


「ふぁる、くん」
「やっと出たー。やすくん、今昼寝してたでしょ?」
「ふわあ…何で分かったの」
「だっていかにも寝起きですって声してるし。それにやすくんのことだしね、何となく分かるっていうか」
「…何それ恥ずかしい」
「やすくんかわいー」
「ッ!?可愛くない!ふぁるくんのばか!」
「はいはい、やすかわ把握」


 ついさっきまで感じていた眠気など忘れ、携帯電話に向かって声を張り上げるやす。その声を聞きながら調子良く喉をからからと震わせるのは、電話を掛けて来たふぁるとである。怒っている中に呆れと照れが見え隠れするやすの声音に、ふぁるとは思わず頬を緩めた。
 やすくんてば必死に否定しちゃって、ほーんと可愛いの。
 そんなふぁるとの思考を余所に、やすは暫く必死の否定を続けていたが、それも無駄だと気付いて騒ぐのを止めた。

「んもう…ふぁるくんてばいつもいつも…照れるって分かってるのに、そうやってからかうんだから」

 それでもやすの小言だけは止まらず、ふぁるとの耳には変わらずやすの声が届いている。それすらも愛おしいと感じる俺も重症だな、とふぁるとは目を細めた。


「そういえばさ、何で電話したの」
「んー?特に用はないんだけどさあ。声が聞きたいなーって」
「……ふぁるくんズルい」
「え、何で。別にズルくないし」
「自覚ないとか…ふんだ、ふぁるくん嫌いだもん」
「まあ俺はやすくんのこと好きですけどね」


 ほらあ、そういう所がズルいんだってば…!
 またも不意打ち。カアッ、と一瞬で顔に熱が集まるのが分かる。電話越しで良かった、とやすは心から思った。もし目の前に彼が居たなら、またからかわれるに決まっている。林檎みたいだ、とでも言われるのだろうか。やすは携帯電話を耳に当てたまま、熱を払うように頭をふるふると振った。


「やーすーくーん」
「……な、に」
「大好き」


 (……僕もふぁるくんのこと大好きですし)(知ってるー!やすくんちゅっちゅ!)








あとがき
やすさんとふぁるとさんのイメージってこんな感じ。(やすさんの)基本ステータスが甘くてふわふわ。ふぁるとさんがひたすら楽しんでる、みたいな。


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