こわいはなし(そうほく編)
「ねないこ、だれだ!しっぽたべるおばけ、きちゃうっショ!」
あるひ、ねるじかんになってもけんかをしている、しゅんすけとしょうきちにむかって、せんぱいねこのゆうすけが、いいました。
「しっぽたべるおばけ…」
「しっぽたべられるん、いやや!」
しゅんすけとしょうきちは、あわてたようすでしっぽをしまい、おふとんにはいりました。
「しっぽたべるおばけって、どんなおばけなんだろう…」
けんかのようすをみていたさかみちは、ゆうすけのいっていた“しっぽたべるおばけ”のことで、あたまがいっぱいになってしまい、なかなかねつけません。
そんなとき、どうしてもトイレに いきたくなってしまいました。
さっきのさわぎがうそのように、しょうきちもしゅんすけも、ぐっすりねています。
ゆうすけもおなじです。すうすう…と、ねいきをたてていて、さかみちは、ねているゆうすけのじゃまをしたくない…とおもいました。
そーっとねどこからでて、へやのドアをあけます。
そこはまっくらなろうかがのびていて、さきがみえません。
いつもは、なんてことないばしょなのに……さかみちはふるえながら、いっぽをふみだしました。
しかし、あまりにもまっくらで、すすむことができません。
かんがえてしまうのは、“しっぽたべるおばけ”のことばかり。
「し、しっぽたべられたくないよ…」
こごえで、しっぽをだきしめながら、あるきだそうとします。
ガタガタガタ!!
とつぜん、ろうかのまどが、おとをたてました。
「ひゃああ!」
かぜが、まどをゆらしたおとでした。
さかみちは、そのおとすらこわくて、ぺたんとすわりこんでしまいました。
「こ、こわいよ…」
もう、どうしたらいいのかわかりません。
「さかみち?」
とつぜん、うしろからききおぼえのあるこえがしました。
さかみちがふりかえると、ゆうすけがしんぱいそうに、こちらをみていました。
「ゆ、ゆうすけさん…」
さかみちはとうとう、なきだしてしまいました。
「ど、どうしたっショ?」
「お、おトイレにいきたいんです…けど…しっぽたべるおばけが、こわくて…!」
さかみちは、しっぽをだきしめながら、ゆうすけにはなしました。
ゆうすけは、さかみちのあたまをなでながら、いいました。
「しっぽたべるおばけは、わるいねこのしっぽをたべちゃうっショ」
「は、はい」
「でも、わるいことをしないねこのことは、きっとまもってくれるっショ。さかみちは、なにかわるいことしたのかァ?」
「し、してません!」
「じゃあ、だいじょうぶっショ。きょうはオレがついてってやるっショ」
さかみちは、ゆうすけにつれられて、トイレにいくことができました。
もう、“しっぽたべるおばけ”もへっちゃらです。
でも、しっぽたべるおばけは、どこにいるのかわかりません。
もしかしたら、いつでもわるいねこを、さがしているのかもしれません。
それからさかみちは、しょうきちやしゅんすけがけんかをしていると、
「“しっぽたべるおばけ”がきちゃうから、やめないと!」
と、けんかをとめることができるようになりました。
これもまた、さかみちがひとつ、“おにいさんねこ”になったしょうこです。
「…………しっぽたべるおばけは…オレがつくったおばけなんだけどなァ…」
(おしまい)