こわいはなし(あきら編)
あるひあきらは、そうほくのねこたちと、かくれんぼをしていました。
「じゃんけん、ぽんっ!」
「ファッ…!」
「あきらがおにやー!」
じゃんけんにまけてしまったあきらは、おにとして、みんなをさがすことになりました。
りょうてで目をかくして、いーち、にーい…と、かずをかぞえます。
「……きゅーう、じゅう。も、もういいかい…!」
こえをかけると、とおくから「もういいよ」というこえがきこえました。
「よし…さがすで…」
あきらは、りょうてをギュッとにぎりしめて、こえがしたほうへあるきながら、そうほくのみんなをさがしはじめました。
みんながかくれられそうな、うえこみのかげや、たてもののかげ。
「みつからん…どこにおるんやろ…」
あきらがきょろきょろしていると、こんどは、みぎのほうから「もういいよ」と、こえがきこえました。
「!あっちや」
こえのしたほうへまがり、あきらははしりました。
「こ、こっちから…きこえたはずや……」
ついたところには、すこしひらけたばしょがあるだけで、いきどまりでした。
だれかがかくれられるような、しげみや、たてものは、なにもありません。
あきらは、くびをかしげました。
「だ…だれも、おらんの…?」
「み ぃ つ け た」
「!!!ピギィイイイ!!」
しっぽをきゅうにギュッとつかまれたあきらは、おおきなこえをあげて、ふりむきました。
すると、そこにはだれもいません。
「こっちだよ」
「ピィイイ!!」
あきらのしっぽをつかんだままのそれは、となりにスッとあらわれました。
「き、きみ、なんや…?す、すけとる…」
「ボクはおばけだから」
「ファッ…!?お、おばけ…?」
ふよふよとうきあがったおばけは、あきらのしっぽをはなして、あやまりました。
「ごめんね。だれもボクがみえないし、ボクのこえがきこえないから。みんながかくれんぼしてるのをみて、こえをかけてみたら、きみにはきこえた。うれしくて、ついからかっちゃったんだ」
「ぼ、ボクだけきこえたん…?」
「そうみたい。みえるのも、きっときみだけだ」
おばけは、たのしそうにわらいながら、“いつもは、わるいことをするねこがいないかみてまわり、わるいねこをみつけたら、しっぽをかんでこらしめているんだ”と、あきらにはなしました。
「さいきんは、ここのねこのしょうきちとしゅんすけが、よくケンカをするから。わるいことをしないか、みにくるんだ」
「しょうきちクンたちだけ、みてるん…?」
「まさか!ぜんぶのねこのことをみているよ。ボクにもおばけのなかまがいるし、みんなでわるいねこがいないかみているんだ」
あきらとおばけは、しばらくのあいだ、はなしをしていました。
おばけをはじめてみるあきらにとっては、おどろくことばかりでした。
すると、おばけがきゅうに、たかくうかびあがりました。
「お、おばけクン?」
「つい、いっぱいはなしちゃったけど、ボクのことはひみつにしててくれる?そろそろみんながくるみたい。きみのことをさがしているよ」
「!そうや、かくれんぼのとちゅうやった…」
「いいかい、ひみつだよ」
そういうと、おばけはすうっと、すがたをけしました。
それとどうじに、ゆうすけたちが、こちらへはしってきました。
「あきらくん!」
「こんなところにいたのか…」
「あきら。なかなかこないから、しんぱいしたっショ」
「ワイ、かくれてまっとったのにー!」
「…ご、ごめんなあ、」
でもおばけが、といいかけて、あきらはくちをとじました。
おばけにあったことは、みんなには“ひみつ”だとやくそくしたのです。
「み、みち、まちがってしもて、」
「なんや、そうなんか!カッカッカ!まいごや〜!」
「わらいごとじゃないっショ、しょうきち。ぶじでよかったっショ」
ゆうすけにあたまをなでられたあきらは、もういちどだけ、おばけがういていたばしょをふりかえりました。
「また、あえるやろか………おばけクン…」
「ん?だれかにあったのか?あきら」
「ピッ…なんもあらへん、ひとりごとや」
みんなといっしょにもどろうとまえをむくと、あきらのうしろから、ちいさなこえがしました。
「きっとまた、あえるよ。あきらくん」
これは、ボクとおばけクンの、ひみつのおはなしや。
おばけクンがホントはどんな“おばけ”なのかは、ひみつにするってやくそくなんや。
せやから、おばけのことをこわがっとるさかみちたちには、ナイショやで。
(おしまい)