おやゆびゆうとひめ
おはなし:ゆうと
コメント:みんな
さんがくさん、おはなしよくしてくれるから、オレもおはなしする。
ゆーとのおはなしだってー!どんなのかなあ!
あるひ、チューリップのおはなのなかから、おやゆびくらいの、ちいさなおひめさまがうまれました。
おやゆびくらいのおおきさなので、“おやゆびひめ”…あらため、“ゆーとひめ”となまえがつきました。
ゆーと、じぶんがしゅじんこうだ。
!! ゆうとはおやゆびひめだったのか…ヒュウ、どうりで小さいわけだ…
おはなでできたかわいいドレスに、かわいいリボンをいっぱいつけたゆーとひめは、とてもきらきらしていました。
まわりには、おいしいおやつもいっぱいで、とてもしあわせです。
ゆーとひめは、こどもがほしかったひとのもとへ、おはなのなかからうまれてやってきたのですが……あるひ、ヒキガエルのやすともさんに、ゆうかいされてしまいました。
「アー……せっていだからネ……ゆうかいネ……」
「きゃー!」
やすとも、うちのゆうとになんてことするんだ。
役!!!!役だっつーのォ!!
ヒキガエルのやすともさんは、ゆーとひめを、はすのはっぱのうえにおいて、
「アー……ここにいてねェ。あたらしいぬまちで、これからくらしてもらうからァ……」
と、ぼうよみでいいました。
ゆうとひめは、“こんなぬまちでくらすのはいやだ”と、わんわんなきました。
やすとも!!なんでうちのゆうとを泣かすんだ!!
だから役だってェ!!フィクション!!!!架空のお話!!わかったァ!?
ゆうと泣いてる!!!
それも役だってばァ!!
はすのはっぱのうえでないていると、メダカがはすのくきをかみきってくれて、ヒキガエルのやすともさんから、にがしてくれました。
「きょうは、でばんすくなくてたすかったよォ……」
しばらく、はすのはっぱのふねで川をくだっていると、そらからコガネムシのさんがくさんが、とんできました。
「わー!かわいいおんなのこみーっけ!オレのおよめさんにしちゃおーっと!」
「わー!」
あっというまにゆーとひめをつかんで、ぴゅーっとそらにとびたちました。
かわいいこみーっけ!
「キミ、おなまえなんていうの?オレさんがく!」
「ゆーと」
「えっ、ゆーとっておとこのこ?」
「おやゆびひめです」
「そっか!でもオレとからだがちがうね!おつきあいできないや!ばいばい!」
と、コガネムシのさんがくさんは、ひなぎくのうえに、ゆーとひめをちょこんとおいて、いってしまいました。
ほら!ちいさいとはいえ、ゆーとひめ、にんげんだからね!
でも、むしのオレけっこうひどいよね。いいのかな…
うちのゆうとになんてことするんだ、さんがく!!!
えー!せっていですって!おはなしですよ!
ゆうとをぽつんと1人置いていくなんて、ひどいぞ!ひどいぞさんがく!(ゆさゆさ)
だだだだだだかららららららおおおおはなななしししししでででで(ゆさゆさ)
なつのあいだ、ゆーとひめはひとりぼっちですごしました。
なつはわりとたくましく、木のぼりをしていましたが、ふゆになるとだんだんさむくなってきて、ひとりでくらすのはむずかしくなってきました。
しかも寒がってるじゃないか!!オレに似て寒さには弱いんだ!!毛布を!毛布を!!(ゆさゆさゆさ)
だだだだだかかかららららら……も、もんすたーぺあれんとは、はんたい……(ぐったり)
うっうっ…うちのゆうとが風邪をひく…まだ小さいんだぞ…
さむさにふるえながら、ゆーとひめがあるいていると、こえをかけられました。
「む…さむそうだな、だいじょうぶか?オレのいえにこい!ごはんともうふをやろう。なに、れいにはおよばんよ!この“びけい”、やさしさもかねそなえているからな!」
のねずみの、じんぱちさんでした。
今日のオレは野ねずみの役か!しかも心優しい良い役ではないか!さすがオレ!
うちのゆうとを頼む…
あ、ああ、まかせろ。いつになく真剣だな…
あたたかい毛布を用意してやってくれ…食べ物も柔らかく消化に良い食べやすいものを…
わ、わかったわかった…過保護か……(あれ…これはフィクションだよな…?あれ…)
ゆーとひめが“いくばしょがない”というと、
「なんだ、すきなだけいるといい!へやのかたづけをてつだってくれれば、それでいいぞ。あとはオレを、さんびすればいい!」
のねずみのじんぱちさんは、そういってむかえてくれました。
しばらくのあいだ、ゆーとひめは、のねずみのじんぱちさんのいえでくらしました。ふゆもあたたかく、しあわせです。
そんなあるひ、
「きょうは、おきゃくさんがくるんだ!ていちょうにもてなすぞ!」
といわれ、じゅんびにおわれました。
「ゆうすけーーー!いらっしゃい!」
「じゃまするっショ…」
「しゅんすけくんもきたのか!」
「は、はぁ……」
おきゃくさんとしてきたのは、もぐらのゆうすけさんと、しゅんすけさんでした。
お、オレ!?しかももぐら!?
もぐらのゆうすけさんが、のねずみのじんぱちさんをたずねたのは、もぐらのしゅんすけさんの、およめさんをさがしているからでした。
「えっ。けっ、けっこん!?」
「こえがうらがえってるっショ……あくまでおはなしだ」
「けっ、けっこんなんて、まだだだだだ…お、オレ、オレにはははは」
今日はオレとしゅんすけが、もぐらの役っショ。しゅんすけはとりあえず落ち着くっショ……
「そうだ!うちのゆーとひめはどうだ?けっこんすれば、うちとゆうすけのうちを、つなげることができるぞ!」
「にせたいじゅうたくは、かんべんしてほしいっショ!!」
と、もぐらのしゅんすけさんとゆーとひめのけっこんで、もりあがってしまいました。
うちのゆうとをおよめさんにするらしいな、しゅんすけくん。
だが、もぐらのキミにうちのゆうとを守れるか?
さあ、話はこのオレを倒してからだ(ズゥウン)
えっ、あのっ、これは、おはなし……えっ
さあ、かかってこい!しゅんすけくん!!オレは逃げも隠れもしないぜ!(ズゥウン)
えっと、あの……えっと……
(ゆうすけさん、たすけて……)
さあ、どうした!そんなことじゃうちのゆうとは守れないぞ!!
(貫禄ある佇まい)
おいおい落ち着けっショ!!フィクション!これはお話っショ!!
ゆゆゆ、ゆうすけさん…………!、!
おまえはいいから逃げるっショォ!!!
ゆーとひめは、“もぐらのしゅんすけさんならかっこいいから、まぁいいかなぁ…”とおもいつつ、へやをうろうろしていました。
そうすると、もぐらのゆうすけさんちにむかうトンネルに、つばめのさかみちさんが、よこたわっていました。
「あの、どうしたんですか?」
「あっ、あのですね!その、ボク、はねをケガしてるだけで……えっと、だいじょうぶです!」
「だいじょうぶじゃないですよね。オレ、てあてしますね」
ゆーとひめは、つばめのさかみちさんの、てあてをしました。
手当てしてくれるだなんて…優しいおひめさまだなあ、おやゆびひめさま…
つばめのさかみちさんをてあてしてからもどると、のねずみのじんぱちさんからも、もぐらのしゅんすけさんとのけっこんをすすめてきました。
“しゅんすけさん、かっこいいから なぁ…”と、まんざらでもないゆーとひめでしたが、やっぱり“そとでくらしたい"とおもいました。
「あの。おそとにでたいなら、ボクおてつだいするよ」
「えっ」
ケガがよくなったつばめのさかみちさんが、またそとにつれだしてくれると、いってくれました。
ゆーとひめは、いろいろとなやみましたが、つばめのさかみちさんのせなかにのって、またそとへとびだしました。
ふたたびそとのせかいにやってきたゆーとひめは、つばめのさかみちさんに、おはなばたけのおはなのなかに、おろしてもらいました。きづけば、あたりはすっかり「はる」です。
おろしてもらったおはなのなかには、じぶんとおなじすがたをしたひとがいました。
「ゆーと!にいちゃん、しんぱいしたんだぞ!」
「はやとくん!!」
いきわかれになったきょうだいの“はやと"と、きせきのさいかいをはたし、ゆーとひめは「やっぱり はやとくんが、いちばん かっこいいね」と、おもいました。
(涙を流しながら天を仰ぎ)
にいちゃん…心配したんだぞ…
つばめ役のさかみちに、ちゃんと感謝しろヨ。
そうだな…うん、そうだな…!
さかみちくん、本当にありがとう。きみのおかげでオレは、生き別れの兄弟と再会することができた…うっうっ
えっ!?は、はい!えっえっ、泣かないでください…!
(あれ…?これってお話だよね…?)
おわり!
……はっ!ゆーとのおはなし、おわってた。
……そうだいな、きょうだいのはなしだったね……。
ふぅ。おはなしって、けっこうむずかしいね。はやとくんだすのにがんばっちゃった。