まだ足りない(庵)

「シンジ君、シンジ君……」
 僕を呼ぶ声が聞こえる。僕を求めるカヲル君の声に僕の意識が、ほんの僅かに浮上する。でもくたくたになった僕の身体が目覚めを阻んで、僕はまた眠りに落ちていく。
 身体の奥に熱を感じた。

 碇シンジ君。彼と出会って僕の世界の色が鮮やかに変わった。恋というものをしたことがなかった僕にとって彼は初恋。そして初めての恋人。
 彼のことを意識し始めたら僕の気持ちはもう止めることができなかった。ただただ彼のことが知りたくて、彼の笑顔が見たくて、それこそ安っぽい言葉で表すなら『彼に夢中』といったところだろうか。
 そんな僕の気持ちに応えてくれたシンジ君と朝から晩まで一緒に過ごす。学校へいる間も家に帰ってきた後も、何かと理由を付けて僕たちは一緒にいる。
 初めはシンジ君が笑ってくれるだけでよかった。僕が知らないシンジ君の一面を知ることができるのが嬉しかった。けれど、恋というものは人を欲張りに変えてしまうらしい。
 シンジ君といるとどんどん彼を好きになる。どんどん彼を欲しくなる。
 貪るようなキスをして、身体を繋ぐ。彼に欲望を打ち付ける。それでも彼に触れたい僕の欲望はこんこんと湧き出してくる。
「シンジ君、シンジ君……まだ足りない。まだ足りないよ、シンジ君。」
 気絶するように眠ってしまった彼の身体で僕は果てしない欲望を慰める。決して満ちることのない、シンジ君への思い。いつか君は、僕に愛想をつかしてしまうのだろうか。
「シンジ君、愛しているよ」
 汗でしっとりと濡れたシンジ君の髪をかき上げ、彼の額にキスを落とすと不意にシンジ君が目を開けた。
「僕も、カヲル君のことが好きだよ」
 僕に散々泣かされて掠れたハイトーンの声。その声すらもいとおしい。
「カヲル君で僕を満たしてよ。ずっとずっと、カヲル君だけで、僕を……」
 うっすらと微笑み、またしても眠りの世界へ落ちていくシンジ君。僕は彼の手を取ると恭しく口付けた。
「君が望むなら、僕のすべてを捧げるよ。ずっと一緒にいようね、シンジ君」

‐おしまい‐



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お題見た瞬間にエロしか思い浮かばなくて……(笑)
というわけでこんな仕上がりに。カヲル君にはこれからもどんどんシンジ君を食べてほしいです←



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