彼らにとっての幸福(Q)

 僕らが再会したあの冬の日から数ヶ月、それまでの離ればなれだった期間を埋めるかのように僕たちは愛情を確かめ合った。
 雪降る街を寄り添い歩き、ホットチョコレートで冷えた身体を温める。聖夜を共に過ごし、新しい年の始まりもカヲル君の腕の中で迎えた。
 冷たい風に吹かれるとカヲル君の鼻が赤くなってしまうことを僕は初めて知り、彼の照れたような笑顔が可愛らしいことも初めて知った。
 咲き始めの桜に心をときめかせ、満開を迎えた花々にため息をつき、散りゆく花びらの儚さに思わずカヲル君の手を握った。
 そして迎えた新緑の季節。萌黄色の丘で僕たちは今日も一緒に過ごしている。
「シンジ君の幸せは、何?」
 さわやかに吹き抜ける風がカヲル君の髪をふわりと撫でた。
「僕の幸せはカヲル君といられること。何気ない毎日をカヲル君と過ごすこと。……だから今、僕は幸せだよ」
 風に弄ばれる銀髪を抑えるカヲル君の左手の薬指にはきらりと指輪が光っている。
「ふふ、それは良かった。シンジ君が幸せなら僕は嬉しい」
 赤い瞳を細めるカヲル君。カヲル君にとっての生き甲斐は僕を幸せにすること、らしい。それはとても嬉しいことだけど、でももう二度と僕のために命を投げ出すことはやめて欲しい。
「カヲル君……ずっと一緒だよ?」
 そう言って僕はカヲル君の右手に左手を重ねた。カヲル君のと同じデザインの指輪が僕の薬指にも光っている。
「もちろんさ。……僕は、君がいない世界なんてもう要らない。どんなにつらくてもシンジ君と共に歩く運命を選ぶよ」
 カヲル君の真っ直ぐな眼差しに迷いは感じられない。僕はそれに安堵した。

 これからの僕たちに何が待っているのかは分からない。でも僕たちならきっと越えていけるだろう。そして僕たちが繋いだ手を離すことも恐らくない。
 何故なら、二人でいることこそが僕たちにとっての何よりの幸福なのだから。

‐おしまい‐



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久々のQ組!!
Qの後世界が平和になって、四季が戻ってきて……という妄想です。カヲル君にはシンジ君と共に生きる幸せを感じてほしいです。



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