赤い跡(庵)

 やわらかい日差しに目を覚ましたカヲルは隣で眠る恋人の愛らしい寝顔に思わず笑みをこぼした。
 昨夜もカヲルに散々焦らされ、啼かされたシンジが目を覚ますにはもう少し時間がかかるだろう。
 布団を捲ると確認できるシンジの蜜色の肢体にはカヲルが付けた所有の印があちこちにちりばめられ、それはとても美しく扇情的だ。
 カヲルは自分の欲望に再び火がつきかけたのを感じた。だが今またシンジの寝込みを襲ったら、シンジはしばらく動けなくなってしまう。明日からはまた学校なのだから無理をさせてはいけないとカヲルは思い直し、ベッドを出た。
 服を着ようとクローゼットを開け、姿見に自分の裸体を晒す。ふと、首筋に残された赤い跡を見つけたカヲルは昨夜の出来事をはっきりと思い出した。
 それはカヲルがシンジを追い詰め、揺さぶりをかけている最中のこと。カヲルは突然首にむず痒いような痛みを感じて動きを止めた。
 シンジが、カヲルの首筋に顔を埋めて其処に噛み付いていたのである。
「シンジ君…?」
 カヲルが尋ねると、シンジは返事をするように噛み付いた其処を吸い上げた。
「んっ、」
 思わず身を震わせたカヲルにシンジが蕩けた瞳で微笑みかける。
「これで、カヲルくんもぼくのものでしょ?」
 啼きすぎてたどたどしくなってしまったシンジの口調。しかしそれがシンジの台詞に更なる愛らしさを添えている。
「カヲルくんのこと、だれにもわたさないよ」
 そう言って小首を傾げたシンジは天使のようであり、蠱惑的にカヲルを惑わす悪魔のようでもあった。その瞬間、カヲルの自制心が焼き切れた――――

「すまない、シンジ君。限界だ…」
 朝日に照らされ相変わらず穏やかな寝息を立てるシンジにのし掛かりカヲルはキスの雨を降らせる。
「んっ、かをるくん…?」
「君が可愛すぎるのがいけないんだよ」
 カヲルに叩き起こされ、ぼんやりと焦点の合わない瞳をしているシンジにそれだけ告げるとカヲルは意地悪くその手を動かした。

‐おしまい‐



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庵カヲル君は物腰やわらかで紳士的。でもベッドの中だときっと猛獣です。
そんなカヲル君に振り回されてばかりのシンジ君が独占欲を見せたら可愛いだろうな、という安易な妄想でした。シンジ君が可愛く書けてたらいいのですが。



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