いつでも君を見てる(庵)
微笑みが、綺麗だなと思った。
内気で人と関わることが苦手な君が不意に見せた笑顔がとても新鮮で、とても清楚で、とても儚くて、僕は一瞬にして君に魅了された。
その瞳が何処を見ているのか、誰を見ているのか、いつだって僕は気にしている。もしもそれをそのまま言葉にしたなら、君は何故と可笑しそうに笑うのだろうか。
春風が吹き渡り、花盛りの桜の梢を揺らす。眩しそうにそれを見上げる君を陽光が照らし出す。僕はそれを窓越しに見つめる。
ぱっと輝きだすその蜜色の肌、艶やめく黒髪。なんて美しいのだろうか。そしてそれを知っているのは今は未だ僕だけ。
僕は君の全てを――笑顔も泣き顔も怒った顔でさえも――この瞳に焼き付けたい。
僕は君の全てを――誰と笑い、何に泣き、どうして怒るのか――知っていたい。
だから僕は、いつでも君を見ている。
絵画に描かれる天使みたい。それが彼への僕の第一印象。美少年とはきっと彼のような人のためにある言葉なのだろう。
柔らかな物腰、穏やかな微笑み、涼やかな声。容姿も性格も何処を切り取ったって彼に非の打ち所などない。
そんな彼を人々が放っておくはずがなく、登下校中も学校内でも彼の周りには常に人垣が出来ている。僕もその人垣の一部に加わりたいけれど、そんな勇気も自信もなくて今日も僕は彼を遠巻きに見ている。
教室の端の席で頬杖をつき、静かに彼を見つめる。横顔でさえ綺麗だ。
不意に彼の視線が宙を彷徨った。同級生と話しながらも何かを探している、赤い瞳。僕の胸が期待に高鳴った。
次の瞬間彼が僕を見つめた。彼を見ていた僕と僕を探していた彼の、眼差しが絡み合う。誰も気付くことすらないであろう密やかな目配せ。
彼の頬が僅かに弛んだ。
今日も彼は僕を見ている。その瞳に映れることが、僕は幸せだ。
‐おしまい‐
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まだ二人は付き合っていません。お互いの存在を意識している段階です。
でもそろそろカヲル君がシンジ君に声を掛ける頃でしょう。あとはラブラブへ一直線!(笑)
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