朝寝坊(Q)
額に柔らかい感触がして、擽ったさにシンジは目を覚ました。
「ふふ、起こしてしまったね。」
カヲルがご機嫌にシンジの髪を梳く。それによって先ほど額に当たった感触がカヲルの指によるものではないことに気づいたシンジは真っ赤になった。
「か、カヲル君!」
「シンジ君の寝顔を見ていたら、キスしたくなってしまったんだ…嫌だったかい?」
カヲルが控えめに微笑み、尋ねる。
「嫌、じゃない、けど…」
「けど?」
シンジが言わんとすることが何なのか分かっているのだが、カヲルはわざと畳み掛けるように聞いた。
「恥ずかしいよ…」
拗ねた口調のシンジがとても可愛いくてカヲルはシンジの尖った口唇にキスする。
恥ずかしい、と口では言うもののキスが大好きなシンジはカヲルの背中に腕を回してカヲルとのキスを味わった。
「んっ、今…何時?」
散々口唇を吸い上げられ、頬や耳朶、鼻先、そして首筋へと口付けられたシンジはふるりと身を震わせながらカヲルに問う。
「他事を考えていたのかい?ダメだよシンジ君…僕の事だけを考えてくれないと。」
「だって、今日はまだ…金曜日だよ?」
カヲルが不粋だと言わんばかりに眉を寄せたが、呑気なことは言っていられない。自分たちはまだ学生なのだからきちんと学校に行かなければとシンジは思ったのだ。
だが。
「10時半だよ。ちょうど2時限目が始まった頃だ。」
カヲルの言葉にシンジは真っ青になった。一方でカヲルがくすくすと笑う。
「え、えっ?何で!?だってさっき起きたばかり…あ、もしかしてカヲル君!」
ここに来て漸くシンジは事の真相に気づいた。
「だって君があまりに気持ち良さそうに眠っていたから起こしてしまうのが忍びなかったんだよ。」
カヲルの枕元に置かれたシンジのスマートフォンはカヲルの手によって電源を落とされて、ただの薄い板と化している。
「もうっ!カヲル君のバカっ!!」
シンジはカヲルに背を向けると布団を被ってしまった。とは言ってもカヲルと同じ布団を使っているのだからいくらシンジが布団に潜り込んでも容易くカヲルに捕まってしまうのだが。
「勝手なことをしてしまってすまない、シンジ君。」
シンジを背中から抱き締め、しゅんとした声で囁けばシンジがおずおずと振り返る。シンジはカヲルのしょげたような態度や声音に弱いのだ。ついつい情を絆されてしまう。
「…もう、いいよ。許してあげる。だから…キスして?」
シンジが丸い瞳を潤ませ蠱惑的にねだると、カヲルは微笑みシンジのうなじを吸い上げた。
カヲルの巧みなキスに翻弄されたシンジは、カヲルの長い指がシンジのパジャマのボタンを器用に外していくのをぼんやりと見つめる。
シンジはこれから与えられるであろう熱に期待で胸が高鳴っていくのを感じた。
‐おしまい‐
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優しくて紳士的なカヲル君はシンジ君にだけはいたずらをしてしまうのです。お互いが強い愛情と信頼で結びついてるからこそのいたずらっ子なんですけどね。
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