先生と生徒でパロディー(庵)

 放課後の理科準備室。薄暗く薬品類の匂いが漂う陰気な部屋には棚に教材用のホルマリン漬けのカエルやヘビが並び、人体模型や骨格標本も置いてある。生徒たちが近寄りたくない場所ナンバーワンの部屋だ。
 そんな部屋をシンジがわざわざ訪れるのには理由があった。
「渚先生…あの、用事って何でしょうか?」
 他の男子生徒とは違い、愛らしい高めの声がカヲルの耳に心地良く響く。
「ふふ、渚先生とは…つれないね、碇シンジ君。」
 微笑みかけるだけで照れてもじもじする無垢なシンジを見ているとカヲルはつい意地悪したくなってしまった。
「カヲルと呼んで欲しいと言ったの、忘れてしまったのかい?」
 シンジの瞳を覗き込むように問うとシンジはあからさまに視線を逸らす。
「で、でも…ここは学校ですし、先生は先生だから…」
 胸の前できゅうっと両手を握り込むシンジ。手だけでなく全身が小刻みに震えているのは緊張のせいだ。
「そう。…君にとって僕は所詮その程度の存在、か。」
 ため息混じりにカヲルが言うとショックを受けたようにシンジの身体がビクリと跳ねた。カヲルとずっと一緒にいたいからこそ学校内では細心の注意を払いたいのに、カヲルに誤解されてしまったことが悲しい。
「ち、違うんです先生、僕は…」
「敬語もやめて欲しいと言ったのだけれどね。」
 シンジが何か言い掛けたのを遮って冷たく言い放つと、カヲルはシンジに背を向けた。何も聞きたくないと言わんばかりのカヲルの態度にシンジの頭は真っ白になる。
 瞳からは抑えきれない涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「先生、ぼくを…僕を嫌いにならないで…!」
 カヲルの白衣を握り締め、額をカヲルの背中に押し付けてシンジが嗚咽を漏らす。カヲルに本当に嫌われてしまったと思い込んでいるのだ。
 不安に駆られて幼子のように縋り付いてくるシンジはまるで天使のようで、たまらなくなったカヲルはシンジを振り返り、きつく抱き締めた。
「君はどうしてそんなに愛らしいのだろう。僕を狂わせるつもりかい?」
 微笑んで、シンジの頬を伝う涙を吸い取るようにキスをする。それで漸く安心したシンジはカヲルの胸に顔を埋めて泣き出した。
 声を上げて泣くシンジの背中を優しく撫でてやるとシンジが徐々に落ち着きを取り戻す。
「先生の、いじわる…」
 しゃくり上げながらシンジは言った。
 シンジが拗ねたように口唇を尖らせる。それに誘われるようにカヲルはキスを落とした。
「すまない。君があまり可愛いものだからつい…ね。」
「だからって渚先生、」
 抗議しようとしたシンジの口に立てた人差し指を当てたカヲルは僅かに首を傾げてシンジを見つめる。
「名前を呼んで、シンジ君。愛しているなら。」
 卑怯だとシンジは思った。そんな風に言われて、逆らえるはずがない。
「…カヲル先生。好き。」
 恥ずかしくてカヲルの瞳を見ることは出来なくて、シンジはやや視線を外し気味に思いを伝える。素直なシンジが愛しくてカヲルは目を細めた。
「よく出来たね、シンジ君。ご褒美にたくさん愛してあげる。…このまま家においで。」
 耳元で囁くとシンジの頬が朱に染まる。一気に熱を孕み溶けた瞳でシンジはコクリと頷いた。

‐おしまい‐



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「先生と生徒」…一度書いてみたかったシチュエーションです。背徳的なお題に妄想が滾ったのは言うまでもありません。
カヲル先生にお持ち帰りされたシンジ君はその後どうなったのでしょうね。(笑)



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