彼にマフラーを巻く(ALL)

【Q】
 見上げれば目の前に広がる数多の星の瞬き。冷たい空気にピンと張り詰めた冬の空は澄んでいてひとつひとつの星の輝きを際立たせている。
 あまりの美しさにカヲルとシンジは揃って真っ白なため息をついた。 
「あっ、あそこ!流れ星だ!カヲル君は見えた?」
 シンジが弾んだ声を上げる。寒さと興奮とでその頬は赤くなっていた。カヲルはそんなシンジのやわらかい頬を両方の手のひらで包み込むと嬉しそうに微笑む。
「僕も見えたよ。シンジ君は何かお願い事をしたのかい?」
「…カヲル君とずっと一緒にいられますようにって。」
 はにかんで言うシンジ。その様は眩暈がするほど可愛らしくてカヲルは背筋が甘く痺れるのを感じた。
「カヲル君は、何かしたの?お願い事。」
 上目遣いで渚を見つめ、シンジはおずおずと尋ねる。カヲルは美しく笑うと艷やかなシンジの黒髪をさらりと掻き上げた。
「シンジ君と一緒に幸せになれますようにと願ったよ。」
「…嬉しい。」
 カヲルの胸に頬を寄せたシンジにカヲルがふわりとマフラーを巻く。びっくりしたようにカヲルを見上げるシンジに微笑みかけて、
「ずっと一緒だよ。」
 と囁けばシンジは蕩けるような笑顔を見せた。

 今日も彼らは仲睦まじい。



********************



【庵】
「あっ、見て!あそこに赤い星が見えるよ。」
 ふわふわのブランケットにカヲルと一緒に包まってシンジとカヲルは星を見上げていた。
「…カヲル君の瞳みたいに綺麗だね。」
 シンジが振り返る。背中からシンジを抱き締めているカヲルはやわらかく微笑んだ。
「夜空の星にまで僕を重ねてくれるなんて光栄だな。」
 しっとりと口付ければシンジが甘い吐息を漏らす。それが耳に心地よくてカヲルは何度も何度もシンジの口唇を吸い上げた。
 シンジとのキスを堪能して漸く口唇を離すと熟れたシンジの口唇もあの赤い星のように艷やかに煌めいていて、その美しさにカヲルは思わず息を呑む。
「カヲル君…寒そう。」
 自分のことをうっとりと見つめるカヲルに照れながら、シンジはカヲルの真っ白な首にマフラーを巻いた。
 いつでもカヲルの事を第一に思い、気遣ってくれるシンジの優しさが心に温もりを与えてくれる。なんて自分は幸せなのだろうかとカヲルは全身がシンジの愛情で満たされていくのを感じた。
「シンジ君も風邪を引いてはいけないよ。」
 シンジを抱き寄せ、ブランケットを掛け直してやるとシンジは甘えるようにカヲルの胸にその身を預けた。

 今日も彼らは仲睦まじい。



********************



【貞】
 右を見ればQ達が、左を見れば庵達が、それぞれブランケットに包まってイチャイチャとしている。そんな彼らを横目で見ながら渚はため息をついた。 
 Qシンジの提案で星を見ようということになったが、何故か渚のシンジは部屋から出てこようとしない。
 『渚は先に行っててよ。後から行くから。』とシンジは言っていたが、自分のことなど放り出してさっさと眠ってしまったのだろうか。渚の心が寂 しさでいっぱいになってきた頃、漸くシンジが外に出てきた。その手には湯気を上げるカップが二つ。
「寒いよー、シンジ君!」
 シンジが出てきたこと、自分の事を忘れていなかったことが嬉しくて、ホッとして渚は情けない声を上げた。
「…ごめん。これほら。」
 シンジは少し口唇を尖らせ、渚にカップをひとつ差し出す。受け取ったカップからは甘い甘いココアの香りが立ち上った。
 そこで漸く渚はシンジが何故なかなか出てこなかったのか、その理由に思い至る。
「これ、僕のために…?」
「…渚はココア好きだろ。」
 わざと渚の顔は見ず、シンジは渚の隣に腰を下ろす。シンジは照れているのだ。渚のために渚の大好きなココアを入れてくれたシンジだが、そのことを指摘されるのは恥ずかしいらしい。好きな人を思いながらもその気持ちを表すのが苦手なシンジ。その奥ゆかしさが渚の心を捉えて放さない。
「ありがとうシンジ君。…あったかくておいしい。」
 渚が笑うとシンジは頬を僅かに染めて俯いた。そんなシンジを渚はブランケットの中に巻き込み、更に自分が巻いていたロングマフラーをシンジの首にも巻いてやる。
 シンジと一緒にブランケットとマフラーを共有する日が来るなんて、感慨深い。
「寒くない?」
 渚がそっと尋ねるとシンジは首を横に振った。
「…渚がいるから、大丈夫。」
 相変わらずシンジは渚の事を見ないが、それでもその言葉はシンジの精一杯の愛情表現だ。
  嬉しくなってシンジを抱きしめると、シンジはそっと渚に頭を預けた。

 今日も彼らは仲睦まじい。

‐おしまい‐



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実はこれ、寝落ちしてしまってワンライとしては投稿できなかったものなんです。折角書き上げていたのにとても残念で悔しかったので、タグは付けずにツイートしましたが。
CPが「お好きなカヲシンで」だったので庵貞Qを総出演させてみました。カヲシンはラブラブしてるのが一番好きです。


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