ハロウィン(Q)

 シンジの部屋では今、真剣にババ抜きが行われていた。参加者はシンジとカヲル、レイ、アスカの4人。ただのトランプゲームであるにも関わらず白熱した闘いになっているのには理由がある。
 今回4人はシンジ&カヲルペアとレイ&アスカペアに分かれていて一番先にシンジかカヲルが抜ければシンジ&カヲルペアの勝ちとなり、レイかアスカが抜ければレイ&アスカペアの勝ちとなるルールだ。そして負けたペアは勝ったペアの言うことを聞かなければならないのである。
 巧みな心理戦を展開し一進一退の攻防の果てに
「やったあ!上がり!」
 アスカが一番に抜けた。
「うわー、負けた…」
 シンジはがっくりとうなだれる。これからアスカに何を言われるのかシンジは気が気でなかった。
「…気を落とさないで、碇君。」
 レイが静かに慰める。
「僕は碇君となら何だって楽しいよ。」
 カヲルは自分とシンジの窮地が分かっていないのかのんびりムードだ。
「あんたたち、負けたんだからちゃんと言うこと聞いてもらうわよ!」
 そう言ってアスカはシンジとカヲルの目の前にスマホを突き出した。
「ここに行ってお菓子をもらってきなさい!」
 アスカのスマホの画面を見てシンジは固まる。
「ハロウィン限定、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ!ハロウィンの日にコスプレしてきてくださったお客様へ当店自慢のハロウィン限定スイーツをプレゼントいたします!」
カヲルが画面に映し出されたメールの文面を読み上げた。
 「明日、この店に行って限定スイーツをあたしとファーストの分もらってくるのよ。」
「そんなあ、コスプレなんて恥ずかしいよ!」
 シンジは泣きそうだ。しかしアスカが許すはずもなく。
「勝負に負けたのはあんたたちでしょ!…それより、早く衣装調達しないと間に合わないわよ。あたしたちはもう帰るから二人で作戦でも練ることね。それじゃ!」
「碇君、渚君…また明日。」
 アスカは言い捨てるようにシンジの部屋を出ていく。それに倣ってレイも帰っていった。
「どうしよう、コスプレだなんて…」
 シンジはすっかり意気消沈している。一方のカヲルはコスプレよりも落ち込んでいるシンジの様子が心配なようだ。
「コスプレとは仮装のことだね。…大丈夫、二人ならできるさ。」
 カヲルが慰めるようにシンジの背中をさすった。
「…そうだよね。僕も渚君となら頑張れる気がする。」
「二人ならきっといいことがあるよ。」
カヲルが微笑んだ。

「うっわ、すごい人出…」
 翌日シンジとカヲルは仮装姿で目当ての店へとやって来ていた。まだ開店前だというのに店の外には様々な衣装に身を包んだ人たちが溢れている。
「ここが最後尾のようだね。…碇君、こちらにおいで。」
 カヲルはさりげなくシンジの手を引くと自分より内側――車道とは反対側に導いた。
「あ…ありがとう、渚君。」
 魔女姿のシンジがうっすらと頬を染める。
「礼には及ばないよ。それより碇君…早く君と二人きりになりたい。君の愛らしいその姿に僕の理性が振り切れる前に。」
 カヲルの言葉にシンジの胸も高鳴って余裕がなくなっていく。無言のままぎゅっと手を繋ぎ、二人はひたすら開店を待った。
 ようやくシンジとカヲルがお目当てのお菓子を手に入れることができたのは並び始めてから2時間後のこと。駅前の広場で戦利品の到着を待っていたアスカとレイにお菓子を渡してシンジとカヲルは適当な理由をつけてそそくさと帰ってきた。
「碇君の血が足りない…!」
 部屋に入るなりドラキュラ姿のカヲルがシンジを抱きしめる。シンジもカヲルの背に腕を回してカヲルからのキスを受け止めた。
「ねえ碇君…お菓子の代わりに君が欲しいのだけれど…」
「っ、いいよ。渚君にならイタズラされても。」
 カヲルとシンジはこつりとおでこを合わせて見つめ合い、唇を重ねた。

‐おしまい‐



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コスプレ物は文章で表現するのが難しいなあと痛感しました。いや、私の表現力の無さが主な原因ですが。誰かドラキュラカヲル君と魔女シンジ君のイラストください!←



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