二人だけの秘密

「シンジ君、映画見ようよ!」
 日直の仕事を終えたシンジが教室に入るなり渚がハイテンションでまとわりついてきた。
「あーもう!うるさい渚、あっち行けよ。」
 そんな渚を鬱陶しそうにシンジは追い払う。しかし渚は気にした風ではない。眉間にシワを寄せたシンジの後ろを鼻歌混じりに――つまりご機嫌についていく。
「お前らホンマに仲ええなあ。いつでもそないにイチャついて…」
 トウジが羨ましそうに呟いた。渚にだけは手厳しいシンジと、シンジになんと言われようとも全く気にせずシンジにちょっかいを出す渚。夫婦漫才のようなやり取りは第壱中学の名物だ。
「でもこの間も映画見てたよね。何見るんだよ、そんなにさ。」
 映画に興味のないケンスケは不思議そうである。そもそも好みが全く違うように見える渚とシンジだ。そんな二人がどんなジャンルの映画を見るのだろうか。
「ふふっ、内緒。」
 とても気になる二人の好みだったが、渚が唇に人差し指を当てて微笑むのでケンスケは聞き出すのを諦めた。
「じゃあな、また明日ー。」
「二人もはよ帰れよ。」
ケンスケとトウジは連れ立って教室を出て行った。
「…教えないよ。教えるわけないじゃん。」
 渚はシンジにも聞こえないような小さな声で呟いた。

 夜。シンジは渚の部屋で渚と映画を見ていた。最新型の薄型テレビに映し出されるのは見るのもおぞましいようなホラー映画。
「わあー、シンジ君…これ怖いよ!!」
「だからやめようって言ったんだよ…ひっ、なぎさっ!」
 ゾンビが主人公の背後から突然現れたのを見てシンジは思わず渚に抱きついた。
 二人が見る映画はいつだってホラー映画。なぜならば。
「あっ、もうやだよ!怖いっ!!」
 涙目でシンジが渚の胸に顔を埋める。
「ゾンビ来たっ、こっち来てるよシンジ君!うわっ!!」
 そんなシンジを抱き寄せて、渚もシンジの肩口に顔を埋めた。
 素直になれないシンジといつでもシンジとくっついていたい渚。ホラー映画はそんな二人が心置きなく身を寄せ合うための大切なきっかけなのだ。

「渚…映画思い出したら怖くて眠れない。」
「僕もだよシンジ君。一緒に寝ようよ。」
「…うん。」
 映画のあと、二人はぴったりとくっついて眠る。身の毛もよだつ恐怖が、甘い夜を作り出す。
 そんな二人だけの秘密。


‐おしまい‐



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貞組は可愛いのです。シンジ君がツンしたりデレたり、妄想するだけで萌えます。キュンキュンします。渚がやんちゃな雰囲気なのもツボですね。



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