小説 | ナノ
私の彼氏は草食系男子


彼氏をその気にさせるのも彼女の役目


・・・と、ファッション雑誌に載せてあったもんだから、とても責任感を感じました。
そして、その下に紹介されていた、彼氏をその気にさせるらしい香水も買っちゃいました。

なぜそこまでせねばならないのか、というと。
私の彼氏がびっくりするほど奥手で性欲無さすぎるからです。
付き合ってかれこれ一年ですけど、初めて彼とした日から半年以上たってるし。
初めてしたときの彼の豹変ぶりは・・・うふふ。

まあ、それはおいといて。
つまり、私と彼は実質、一回しか致しておりません!
お泊りはするものの、濃厚なちゅーは無く、触れるだけのおやすみちゅーだけです。
中 学 生 か !
いや、イマドキの中学生だってそんなんじゃないだろうよ。
とにかく!
私だってしたいんです!
あ、別に性欲強いんじゃなくて、世間一般の彼氏持ちとしてね。

と、いうことで、

「え? 今日? いいけど・・・」
「ほんと? じゃあ連の好きなもの作って待っとくね!」
「あ、うん」

お泊り誘えましたひゃっふー!
ああ、今日こそは、彼の豹変ぶり見たいな・・・!
そう思いながら、授業を終えてすぐに帰りました。

彼が家に来て、ご飯食べて、片付けて、先にお風呂に入りました。

「えーっと、谷間と太腿の付け根にワンプッシュ・・・わ、いい香り! でも連この香り好きかな・・・?」

その香水は、石鹸とお花の香りが混ざったような、柔らかくて甘い香りでした。
しかし、効果絶大と言っても彼が好むか心配になってきました。

「とりあえず! やってみてからよ!」

リビングに行くと、毛布にくるまってゲームをしていました。

「連、お風呂どうぞー」
「んー」

彼の隣にちょこんと座ってみました。
ふわって香ってそれで・・・

「あれ、なんかいい香りする・・・」

きたーーーーー!
なんだかフラグたってきたよ!
グッジョブ香水!

「そう?」
「うん、亜希香水つけた?」
「香水はつけてないけど、ボディミストかな?」
「ふーん、ま、風呂入るわ」
「行ってらっしゃい」

パタンと浴室の扉が閉まるのを確認して、私は疾風の如く寝室をきれいにしました。
さあこい!メークラブだぜひゃっふー!

「ただいまー」
「おかえりーアイス食べる?」
「食べる食べるー」

「あの芸人おもしろいねー」
「ほんと、まじおもろい」

「ふわあーねむ」
「ベッドいく?」
「いや、今日はソファーでいいや」

ん?

「今なんて・・・」
「え? いやだからソファーで寝る」

なんでーーーーーー?
うそ! さっきまでいい感じだったのに!
お風呂上がった途端いつもどおりだし!
挙句の果てにはソファーでぐっないって!

おまえはホントに男かーーー!

なんて言えるはずもなく、

「あ、そう? じゃあちゃんと暖かくしてね」

臆病な私はとぼとぼ寝室へ転がり込みました。

「うっ・・・・・・なんでよ・・・なんでいっつも空回り・・・
私だって普通の恋人みたいなことしたいのに・・・」

悔しくて寂しくて悲しくて、隣にいる予定だった彼の代わりに、まくらにしがみついて泣いておりました。

「連のばか、あほ、わからずや」
「それで?」
「一生インポで苦しめ・・・え?」
「ふーん、亜希そんなこと思ってたんだ」

一人だった筈なのに、いつのまに入ったのやら、彼がベッドに座っおりました。

「なん、で・・・ソファーで寝たんじゃ・・・」
「寝ようと思ったけど、寝室から泣き声聞こえて寝るに寝れなかった」

うそ・・・泣き声聞こえてたの・・・

「で、来てみたらなんか俺相当な言われようだし」
「あの、これはちがくて・・・」
「なにがどう違うの?」

なんか怒ってる!?
いや、なんで連が怒るのさ。
怒りたいのはこっちだし・・・!

「・・・んだよ」
「ん?」
「なに怒ってんだよ! 怒りたいのはこっちだっつーの! 私たち恋人になって一年以上たつのにえっち一回しかしてないとか、意味わかんない! イマドキの中学生でもそんなんじゃないっつーの! 友達に相談したり雑誌で勉強して、色々ムード作ったり、恥ずかしいの堪えて露出多い服来てみたりしたのに、連ってばなんの反応も示さないじゃん! こんなのっ私だけが好きみたいっ・・・! 今日だって通販で買った香水使ったけど、連なにもしてこないし・・・! もういやだあ・・・! 辛いんだよ・・・」
「亜希・・・」
「私が嫌なら触らないでよ・・・連のばか!ちび!はげ!イン・・・」

めちゃくちゃに思っていたことをぶちまけていると、不意に彼の口で私の口を塞がれました。
そして、押し倒されてるという状態だと認識した途端思考停止、

「悪かったからそれだけは言うなよ・・・」

あ、確かにすいません。

「亜希がそこまで悩んでて、俺のために恥ずかしいことやってたなんて知らなかった」
「・・・」
「でも、俺ただ怖かったんだ」
「え・・・?」
「驚くかもしれないけど。俺いっつも耐えてたんだよ?」
「なんでよ」
「初めて亜希としたとき、俺、亜希のことめちゃくちゃにしたいって一心だった。 その時、俺このままだったら亜希を壊しちゃうって思って怖かった。 だから耐えてた。」
「・・・わたしはめちゃくちゃにして欲しいよ」
「分かってない。 」
「そんなの別に分からなくてもいいよ」

私は、覆い被さるけどどこか小さく見える彼にそっと腕を回しました。

「連がめちゃくちゃにしたいって思うくらい、連が私を思ってめちゃくちゃになれーって思ってるもん」
「それに、それくらい愛されてるのなら、壊されてもどうされてもいいや」

そう言ってぎゅーって抱き締めてやったら、彼は大きなため息をつきました。

「あーもー知らないよ?」
「うん」
「今日ほんとやばかったんだからな。
亜希めっちゃいい香りするし、髪の毛濡れてるし・・・俺理性なかったら普通にソファーでやってたし」
「え? そんなに・・・?」
「一緒に寝たら絶対襲うって思ったからソファーで寝ようとしたのに・・・なんか泣いてるし・・・俺なんか勘違いされてるし・・・」
「あーごめん・・・」

そう言うと、彼が私の首筋に顔をうずめて、くんくんと匂いをかいでいました。

「亜希いい匂い・・・やばい、食べちゃいたい」
「・・・連」
「ん?」
「あのね、今までガマンしてくれてありがとう。だからその分・・・」

食べていいよ?

そう言う前に、彼は私を食し始めました。なんて言ってみたり。
最中の彼は、ほんとうに豹変ぶりがすごくて、ドキドキしっぱなしでした。きゃっ


「おはよう亜希」
「おはよう、連」


そう言って鎖骨にキスを落とすと、彼はまた私を襲い始めるのでした。



私の彼氏は草食系男子

(と思いきや驚異の肉食だよね)
(うん、俺性欲強くなったんだよね。亜希のせいで)
(へ?)


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