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臆病者の末路


「…別れた。」


目の前で注文したドリンクを飲む彼女。今日はエスプレッソを飲んでいる。エスプレッソを飲む時は、湧かれた彼氏に対して苛立っているときだということを俺は知っている。


「で、何が悪かったの?」


それを知っている俺は決まって理由を問う。彼女は不満をぶちまけたいと思っているから。


「あいつ、ただ自分の自慢話をニコニコして褒めちぎってくれる女が欲しかっただけなんだの、まじばかじゃないの。」


そうだね、そう相槌をうてば、さらに一人で不満をぶちまける彼女。
彼女と付き合うやつは何かしらおかしな癖を持っていたり、面倒くさいやつらばかりだ。彼女自身も気づいているはずなのに、恋することをやめない。


「ちょっと恋愛休んでみれば?」


そう言うと、はあ、とため息をこぼす。


「止めたいよ、止めたいけどさ」


寂しいんだ。
ぽつりと呟く彼女。さっきまで眉間にしわを寄せて不満を述べていたのに、急に泣きそうな表情をする。

俺だったら、なんて心の中で小さく呟く。


「他の男なんてやめなよ。」


やめて、俺にしなよ。
何回心の中でそう唱えただろうか。だけど臆病な俺は、彼女との関係を壊すのが怖くて口に出さない。


「じゃあ誰がいるのよ。」


俺がいるよ。


「…もっといい人いるって。」


やっぱり俺は臆病者だ。


「…ありがと。そろそろバイトだから行くね。」


友達として励ましてくれてる。そう解釈した彼女は、笑顔でそう言って去っていった。
本当は違う。俺にしなっていつも思ってる。だけど、口には出さない。


ああ、なんて臆病なんだろうか。


彼女が置いていったカップはまだほんのりと温かくて、それがより一層胸を締め付けた。





20150115

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