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帰り道でのお話です。
「それにしてもよー、あの優男……あ、スマン、なまえの兄貴だっけか」
「いえ、優男でチャラ男でクズなので、どうとでも言ってください」
「ボロクソだな」
「私あのひと嫌いなので」
「そ、そうか…でもよ、サーブはすごかったよな!最初からアレやられてたらヤバかったぜ!」
「バレーだけは上手いですからね。バレーだけは」
「お前本当及川さん嫌いだよな」
「さすがなまえの兄貴っつーか、影山の中学の先輩っつーか……あれ?ていうか、影山ってなんで烏野にいるんだっけ?」
「え?」
「県内一の強豪っつったら、やっぱ白鳥沢だろ」
「シラトリ…?」
「白鳥沢よ、翔陽。白鳥沢学園高校」
「県ではダントツ、全国でも必ず8強に食い込む強豪校があんだよ」
「おお!」
「……落ちました、白鳥沢」
「落ちた!?」
「推薦来なかったし、一般で受けて落ちました。試験が意味不明でした」
「あそこは普通に入ろうとしたら、超難関だもんな」
「へー、王様、勉強は大したこと無いんだネー」
「……チッ」
「いくら月島の嫌みでも、今のは仕方ないわね、事実だし。アンタはバレー以外は頭悪いから」
「うるせー!んだよ、自分が受かってたからってバカにしやがって…」
「えっ、受かってたって……まさかなまえちゃん、白鳥沢受かってんの!?」
「あ、はい。でも元々烏野に通うって決めてたので、腕試しのつもりで受けただけなんですけど」
「いやいやいや腕試しで白鳥沢って初耳なんだけど!?」
「でも確か、なまえは影山と同じクラスだよな?そんなに頭いいのに、なんで進学クラスいかなかったんだ?」
「面倒だったからです」
「…えっ?」
「進学クラスの方が、進むの早くて面倒じゃないですか。だから普通クラスで志望しました」
「ええー…」
「特に希望の進路もないし、別にいいかなと思って」
「まあ、それだけ頭良かったら普通コースなら余裕でクラス上位維持できるだろうしな」
「つーか、なまえちゃんはなんで烏野にしたの?お兄さんから離れたかったっていうのは分かったけど」
「バレーの強豪なら、青城や白鳥沢の他にもあるだろ?」
「いや、私そもそも男バレ入る気なかったですし」
「えっ?なまえって、影山がいるから烏野来たんじゃないの?」
「え?」
「は?」
「だってなまえ、ずっと影山のこと気にしてんじゃん。王様とか。だから影山についてきたんじゃないの?」
「な…何言ってるの翔陽、そんな訳ないでしょ」
「え?違うの?」
「違うわよ」
「でも、確かになまえはなんだかんだ影山の事すげえ心配してるよなー」
「田中先輩まで何言い出すんですか!?」
「なまえ…やっぱお前、俺とバレーする為に……!」
「違うって言ってんでしょうが!!」
断じて違います。
「なあスガ、俺にはあれが照れ隠しにしか見えないんだが」
「俺もだべ」
「だから違いますってば!!」