02.別世界の出会い





ふわふわ、きもちいい。
あったかくて、やわらかくて。
なんだか、あんしんする。



「……なまえ」


きいたことのあるこえ。
あたまにひびくように、やさしくはなしかけてくる。



「なまえ、君はね、これから今までとは違う世界へ行くんだよ」


いままでと、ちがうせかい…?


「新しい世界へ行ってから、もしも、今までの世界の君が死んでしまっても、君はそこで、新しい人生を歩むんだ」



あたらしい、じんせい…
よくわからないけど、なんだか、すてきだ。



「けれど、もし、元の世界の君が、助かったら…」



だんだん、こえがとおのく。
きこえなくなるまえに、さいごにとどいたことば。






「その時は、元の世界へ帰らなくてはいけないよ」














「…え」


突然、眩しい光に照らされ、きゅっと目を瞑る。
先程までと違い、耳にうるさいほどの雑音が侵入してきた。
手を目元に翳しながら僅かに目を開けると、思わぬ景色が飛び込んできた。




「…道路だ」

普通の、何の変哲もない通り。
人通りは多くないが、沢山の車が行き交っている。
よく見ると、この先は川があるようで、途中から橋が架かっていた。
あと、足下には私の通学鞄が落ちてた。
拾い上げながらもう一度考えてみるが、こんな場所は見たことがないし、ここまで自分で来た覚えもない。
もしかして、本当に新しい世界というものに連れてこられたんだろうか。



「ていうか、これからどうすれば…」

言いながら振り返って、固まった。
そう、正に、固まった。
身体も、思考も、全て、一瞬の内に固まってしまった。



「…え?」


なんで、なんで、なんで?
振り返った先に居たのは、此方を見詰める二人の少年。
何故か至極驚いた顔をしているが、問題は表情ではない。
その顔触れに、非常に問題がある。




「…かかかかぜまるくんだ…!」

嘘、嘘、まじで?
目の前には、イナズマイレブンの風丸君と、円堂君が、居た。
え、何、なんで、あ、わかった、コスプレか。
いやしかしなんて精巧なコスプレなんだ。
髪とか超自然だし、背丈の差も絶妙。
まさかこんな所で風丸君や円堂君のレイヤーさんに会えるとは。
考えて考えて、自己結論に至る。
感激しながら、眺めていると、円堂レイヤーさんが口を開いた。


「…い、今、いきなり出てきたよな…?」
「え?」


あれ、うわ、声が本物そっくりだ。
最近のレイヤーさんはそこまでクオリティを求めるのか、すごいなあ。

また考え始めて、止まる。
今、この人、なんて言った?
…いきなり出てきた?
って、どういう事なんだ。

「何もないところに、いきなりびゅって出てきたよな?なあ、風丸も見たよな?」
「あ、ああ…突然、現れたな。ていうか、なんで俺の名前…」


うわ、風丸君も声激似クオリティ高い。
ああでもなんか警戒されてる感じ?
円堂君より一歩後ろに下がっちゃった。


「…円堂、もう行こ…」
「なんかよくわかんねえけど、お前すごいな!」
「「…は?」」
「なあ、今のどうやるんだ?もう一度やってくれよ!」
「え、いや、あの、」
「おい円堂…」
「あ、俺は円堂守!こっちが風丸だ。お前の名前は?」
「う、え…」


ノンストップで繰り出される攻撃に、戸惑う私と、既に呆れ果ててしまった風丸君。
何この子。なんか知らんが、やたらテンション上がってる。
そしてすごくそのペースに巻き込まれている。
だめだ、落ち着け私。



「なあ!名前、教えてくれよ!」
「…みょうじなまえ、です…」




飲まれてしまった。