16.臆病で優しい食いしん坊
僕は、ナマエが好きだ。
小学校の頃から、ずっとナマエの事が好きだ。
けど、ナマエは僕を、ただの友達にしか見ていない。
そんな事、ずっと前から気付いてた。
僕はシカマルみたいに賢くないし、サスケみたいにかっこよくないし、キバみたいに積極的でもない。
でも、ナルトみたいにただの友達として思う事なんて、出来っこない。
「チョウジ、何食べてるの?」
「!ナマエ…」
「あっ、チョコだー、しかもそれ新しいやつ!」
「……ナマエも、食べる?」
「やった、ありがと…あ、でもそれ、最後の一個でしょ?いいの?」
「うん、いいよ。はい、どうぞ」
そっとナマエの目の前に差し出すと、ナマエは遠慮がちに受け取りながらも、嬉しそうにそれを頬張った。
最後の一口は、いつもなら絶対に他の誰にもやらないけど、ナマエだけは別だ。
ナマエになら、チョコだってクッキーだって、どんなものでも分けてあげたい。
ナマエとなら、同じものを一緒に食べて、おいしいねって言い合いたい。
だってナマエは、僕の特別なんだ。
「ん、おいしい!私コレ好きかも」
隣に座って、幸せそうににこりと僕に笑いかけるナマエ。
その笑顔は、きっと僕だけじゃなく、たくさんの男を惑わしてる。
けど、ナマエ本人はそんなこと露ほども知らずに、こうやって無邪気に笑うんだ。
「あっ、そういえばさー、駅前に新しくケーキバイキング出来たの知ってる?今度一緒に食べに行こ!」
「うん、いいよ、行こっか。他、誰誘う?」
「え?ケーキバイキングだし、チョウジと二人で行こうと思ってたんだけど」
「!」
……ナマエ、それ、デートっていうんだよ。
分かってないでしょ。
臆病で優しい食いしん坊
(でも、たまには僕だってオイシイ思いしてもいいよね?)