04.再会






「…この廊下、どこまで続くんだろう」




薄暗い長い廊下を、私はひたすら歩いている。
この廊下、所々で壁にゲルテナの絵画が飾られていたりはするけど、扉や窓はひとつも見当たらない。
幸い、さっきの化物みたいな絵画の女や、頭のないマネキンは居ないようだけど…どれだけ歩いても、代わり映えのない景色が続くばかり。
本当に、この先に何かあるんだろうかと不安になってくる。










「…あ」




めげそうになった所で、ようやく変化が見えた。
なんだろう、あれは…階段?





「…下に、続いてる…」



歩を早めて徐々に近付くと、下の階へと続く階段が見えた。
…なんで更に下?
美術館の階段を降りてからというもの、進む先は段々と地下に潜り込んでゆく。
本当に、この先に進んで大丈夫なのかな…





「…でも、もう戻れないんだもん。行くしかないよね」



本日何度目かの気合いを入れ直して、階段を踏み締めた。










降りた先は、真っ赤な通路だった。
先程までの白い壁紙とは打って変わって、赤色の壁紙。
階段のすぐ側の壁には、『青い服の女』とだけ書かれていて、床には青い花弁と、赤いシミ(…血?)が所々に散らばっている。
花弁の示す先には、また廊下が続いているようだ。










「こないでっ!!」








進もうとした通路の先から、突如聞き覚えのある少女の声。
この声、まさか…!








「イヴ!?」



声のする方へ行ってみると、動く絵画の向こうに、怯えたイヴが見えた。








「うちの妹に何してんの!」



思わず走り出して、絵画を後ろから蹴り飛ばす。






「お姉ちゃん!?」
「イヴ、おいで!」



驚くイヴの手を握って、通路先の扉を目掛けて走った。










「はあ、はあ…ふー、びっくりしたー」



扉を閉めて、大きく息を吐く。
幸い、扉の此方側には何も居ないようだ。



「イヴ、もう大丈夫…」




突然、イヴが私に抱き付いてきた。



「イヴ?」


名前を呼んでみるけど返事は無く、イヴは俯いたまま私の腰にしがみついている。




「……一人で、よく頑張ったね」
「……っ…」



ぽんぽん、と、イヴの頭を撫でる。きっと此処まで一人で、あの動く作品達から逃げてきたんだろう。
こんな不気味な場所で、たった一人で。
怖かっただろうに、イヴは人一倍頑張り屋さんで強い子だから、きっと泣き言なんて言わずに進んできたに違いない。
しかし、私を見て緊張の糸が一気に切れたらしいイヴは、私の胸に顔を押し付けて、声も上げずに泣いた。