03.キャプテンはフリーダム
「…あの…」
なんだか妙に気まずい空気が流れる。
あの後、何故か興奮の冷めやらぬ円堂君のお家まで連れていかれ、現在彼の自室で三人揃ってテーブルを囲んでいる。
ここへ着くまでに解った事は、彼らはレイヤーさんじゃなくて、本物の円堂君と風丸君だった、という事。
そして、今私がいるこの世界は、イナズマイレブンの世界だという事。
流石にこうなると、事故だけでなく、天使や異世界トリップなんていう、非現実的な全ての事象を信じざるを得ない。
…体験者の私としては、だけど。
起きたことを全て二人に話してみると、やはり、半信半疑というか、不信な空気が流れた。
やっぱり、こんな事話したって信じて貰えないよね。
私だって、夢みたいなんだもの。
「あ、あの、私…」
「…凄いな」
「え」
ぱっと顔を上げると、目をきらきらさせた円堂君。
もしかしてこの子、まるっと信じてくれたのか。
信じて欲しい私が言うのもなんだが、ちょっと人を信用しすぎだと思う。
変な人に騙されたりしないかなあ。
「円堂、今の話、信じるのか?」
「当たり前だろ?こんなに真剣に話してるんだし。それに、風丸もさっき見ただろ?何も無い場所にいきなり出てきたところ」
「…まあ、あれは、確かにびっくりしたけど…」
「多分あれがトリップ?の瞬間だったんだよ!俺達、凄いの見たんだぜ!」
楽しそうに、風丸君に捲し立てる円堂君。
それに押されたのか、意見に納得したのかは解らないが、風丸君はひとつ溜め息を吐いてから、私に笑顔を向けた。(やっぱかっこいい)
「俺も、信じるよ」
「…!あ、ありがとう!」
良かった、信じてくれなかったら私、ただの変な人になるところだった。
お巡りさんとか呼ばれなくてほんとに良かった。
ていうか、呼ばれたって私、来た世界が違うんだからお母さんとか連絡できな…
「…あ」
「どうした?」
ああ、風丸君の前なのに思わず間抜けな声が出てしまった、いや、そんな事は今はどうでもいい。
それよりも、大変な事実に気付いてしまった。
「…私、帰る家、ない…」
数秒、空気が固まった。
「どどどどうしよう、家どころか行く宛てもないし、お金もないし、ていうか私まだ中学生だよ、働けないし、学校とかも、どうすれば…」
「お、落ち着け、みょうじっ」
パニックの私と、宥める風丸君。
それを眺める円堂君は、何故か平然とした顔で言ってのけた。
「じゃあ、俺ん家に住めばいいじゃん」
「「……はい?」」
再度空気が固まる。
そして私達が何か言う前に、彼はぱっぱと部屋を出て行ってしまった。
「…え」
「はあ…」
…ええと、あの子は何を考えてるんだ。
俺ん家に住めばって何、円堂君の家に居候って意味?
戸惑っている内に、ばたばたと音を立てて、円堂君が戻ってきた。
そして、部屋の扉を開けるなり、
「母さんが、いいって!」
まじですか。