sweet








「ギャリー、たすけて!」


がちゃん、大きな金属音を立てながら、ナマエがキッチンの中で叫ぶ。
やっぱりダメだったわね、と思いながら、腰を上げてキッチンへと向かった。






「どうしたの?」
「ギャリー!ミキサーが言う事聞いてくれない…!」



キッチンに入ると、振り向いた彼女の顔には、飛び散ったらしい生クリーム。
どうやらハンドミキサーを上手く使えずに撒き散らしてしまったようだ。
しかも生クリームの入ったボウルは、その拍子か、床に逆さまに伏していた。



「あらあら、何やってんのよ」
「うう、だってぇぇぇ…」



なまえの手の中で未だぎゅんぎゅん唸っている其れを取り上げ、スイッチを切る。
拗ねて指に付いたクリームを舐めているなまえの頭を撫でてから、ハンドミキサーの先を外してシンクへと放り込んだ。

いつもギャリーが作ってくれてるから、今日は私がケーキ作る!
と、意気込んでキッチンに籠ったのが、つい十分程前。
やる気に水を差しちゃいけないと思って手を出さないでいたけど、正直この展開は予想通りだった。
だって、普段滅多に見ないナマエの不器用は、料理に限って最大限発揮されるのだから。




「…ていうか、なんで生クリームを先に泡立ててるのよ」
「え?なんで?」
「ケーキ作るんでしょ、クリームより先に生地混ぜなきゃ」
「あ!そっか!」
「もう、馬鹿ねぇ」


呆れてくすりと笑うと、馬鹿じゃないもん、なんて拗ねる。
頬を膨らませてそっぽを向く仕草が可愛くて、つい、その丸い頬に付いたクリームを舐めとった。



「ひゃうっ!?」
「ん…甘さは丁度良いわね」
「なっ、な…に、してんのバカッ!」
「馬鹿はどっちよ?全く、ハンドミキサーも使えないのにケーキ作りたいだなんて…」
「うう、だって…」


俯いて肩を震わせ、泣きそうになるナマエ。
…ちょっと意地悪が過ぎたからしらね。

ぽんぽん、と頭を撫でてやると、既に涙目になったナマエが此方を見上げてきた。
あ、それいい。可愛い。




「ほら、拗ねないの。これ片付けたら、アタシと一緒に作りましょ?」
「…うんっ」




微笑んだナマエが目を細めると、零れた涙が頬についたクリームと混じった。
あ、それもいい。可愛い。
っていうか、






「…誘ってるのかしら」
「へ?」



目をぱちくりするナマエの頬を…否、頬についたクリームを舐める。
ひゃうっ!なんて可愛い声をあげるものだから、悪戯心が更に刺激された。




「片付けの前に、ナマエを綺麗にしてあげるわね」
「えっ、ちょっギャリー!?」
「いただきまーす」
「ちょ、待っ…!」
















sweet




可愛いナマエちゃんは、美味しくいただきました。