7:雨 「何処に行っていたの」 その声に意識を浮上させた。 いつもの色、見慣れた真っ黒な髪と服の。 錆びついたドアを後ろ手に閉め、滴る髪をそのままに軋む床に濡れた足跡をつけた。 その間もラストはずっと何か言っていて。 ついには勘が働いたのか、俺の手を見て双眸を細めた。 「あの子は?」 「分からない」 そう答えると驚いた様に赤い目を見開いた。 出血が酷かった。 死んだかもしれない。 人間は弱いから。 刺した瞬間に伝った温度。 見慣れた色。見慣れた光景。 あの後、あそこに戻ったけどあいつはいなかった。 自力で動いたか運ばれたか。生死は不明。 散々走り回ったが見つからなかった。 俺の頭がまともに働いてなかったから。 [page select] [目次] site top▲ ×
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