7:雨






気づいたら雨が降っていて。
纏わりついてくる金糸を指で払った。



朝からずっと暗鬱な色をしてたけど、とうとう降り出したか。

街はこんなにも寒々しいのに、降ってくるのはやっぱり雨で。


俺は泥を巻き上げた様な曇り空を仰いで溜息を吐いた。


「………」

その時、不意に自分のした事を思い出して真っ赤になった。
その後真っ青にもなった。
自分のせいだけど最悪な気分だ。




要するに俺は、あの野郎に嫉妬してた訳で。




「あ――…」

その辺の街灯に頭をくっつけて項垂れた。

未登録に合わせる顔がない。

どうも俺はあいつの事となると駄目らしい。
元々恋愛だとかそういうのが苦手なのもあるかもしれない。


次いつ会えるか分からないし、今なら未登録はまだ近くにいるだろう。
気まずいけどやっぱり今謝りたい。

ようやくそう思う事が出来て。
遅まきながら俺は未登録が走って行った方向に駆け出した。

だけど、一つ角を曲がるとすぐ止まらざるを得なかった。
何故か其処は人だかりになっていた。


狭い道の真ん中に、近所に住んでいるらしい人間から通行人まで沢山集まっている。

それなのに妙に静かで。
囁き合う声も、聞こえる様な聞こえない様な。




「女の子が」

誰かが言った。


俺は何処か夢心地にその群衆に近寄った。
此処を通るしかないし。
何を騒いでるのか知らないが、そんな事より早くあいつに会いたかった。




今頃、俺のせいで困惑してるだろうから。


だから少しでも早く。











予感も何も無かった。
だってほんの十分前まで一緒だったんだ。

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