6:嫉妬 渦巻いた雲が、轟々と音を立てていた。 何故此処に、とは思わなかった。 だって彼はいつも突然だから。 だけど、怖かった。 彼が怖かった。 纏っていた空気がいつもと違っていたから。 「…、エンヴィー」 漆黒の髪に隠され、その表情が見えなくて。 ただ其処に彼は在って。怖くて。 思わずその名前を口にしたら、黒塗りの瞳が未登録を捉えた。 それは今まで見た事のない色をしていた。 「エン…」 直感に似た、確かな恐怖だった。 だからもう最後なんだと思った。 「エンヴィー…、私は…」 ドスッ。 「……………、…………」 抱いたのは殺意。 手を下したのは一瞬。 醜悪なその名を呼ぶな。 頼むから。 [page select] [目次] site top▲ ×
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