5:顔-後編- 「…昨日は、助けてくれてありがとう…。でも、あまり人を殺さないで」 一瞬、わざとかと思った。 俺はラストの視線を痛い程背に受けて。 しかも、冷ややかなら良かったのに、ラストは面白そうに俺の顔を窺ってきて、 本当に最悪な気分になった。 お前のせいだ、と言わんばかりに睨むと、あいつは首を傾げてきょとんとしていて。 苛々するのに、 その顔を蹴り倒してやりたいのに。 それでも何故か、怒る気にはなれなかった。 永い永いこの先、 もしも、昨日殺しそびれたあの三人の男を見掛ける事があったら俺は、 やっぱりぶっ殺すんだろうなと思う。 小さなその背中を 格子越しに見ていた。 向けられるのは 容易に崩れない横顔。 飽き飽きしてるさ。 だけど時々 籠の中から 声が聴こえる。 それが今も 俺の意識を捕らえてやまない。 何度目かの秋が来て 未登録が 俺の名を呼んだ。 [page select] [目次] site top▲ ×
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