5:顔-後編-






散乱した死体を見てきたのだろう。
おチビさんはこちらを凄い目で睨んできた。


「お前がやったのか」

「なんの事?」

「…未登録から離れろ」

「何それ。なんか勘違いしてない?」


未登録?

ああ、こいつの事か。
おチビさんが呼ぶとこんな感じなんだ。



「エド、アル…この人は偶然通り掛かって、……助けてくれたの…」

「助けたって…」

「…ごめんね、急にいなくなって…変な人達に絡まれて…もう、大丈夫だから」

そう言って少し笑って。
おチビさん達の方へ歩いていく。


そう。
此処で俺との事バレる訳にはいかないし、おチビさん達と行動するのが自然な流れだ。
間違ってない。







でもしょうがないだろ。







気に食わないんだから。







「未登録」


名前を呼ぶと、酷く驚いたその顔が振り返る。

ようやく俺だけを映す目。
でもそれじゃ足りない。

完全にこちらを向くより早くその腕を掴んだ。



「あ…っ!」

慌てたような、あいつの声を耳にした気がする。
よく分からないけど、何も言わせたくなかった。


力任せに後ろ頭を引き寄せて口を塞いで。




「…っ!?」

見開かれる目。
嘆きも怒りも恐怖もない。




ただ、俺を映すだけの。







頼りなく肩先に添えられた手。
酸欠なのか、苦しげに眉を寄せているのを見て解放した。

その瞳と目線を合わす間もなく体を担ぎ上げて。







「じゃあね、鋼の錬金術師さん」

唖然としているおチビさんににっこり笑って見せ、
一瞬後ろの弟と目を合わせて階上へ飛躍した。

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