5:顔-後編-

暇潰しの玩具ならそれらしく、
俺の目の届かない所で壊れるな。









視界が少し暗くなるくらい眉を顰めて、俺はしげしげと自分の手を眺めた。



「………あ〜あ。」

ぱたりと腕を下ろし、やる気なく天井を仰ぐ。

その時特有の気配がして。
首を後ろに反らすと、逆さまの視界にラストが映り込んだ。
仰向けに寝転がってる俺を見て口を開く。


「何してるのよ」


「べっつに〜」

見れば分かるだろ、この通りなんにもしてない。


「早く行って頂戴。手が足りないんだから」

「うるさいなぁ…おばはんは」


あーだるい。
今日に限って面倒臭い仕事なんだ。



「……」

あの時の一挙一動。
思い返すと自分でも訳が分からない。




ひょいと起き上がって荷台から飛び降りた。
こんな時は仕事ついでに人間で遊ぶに限る。



「またあのお嬢さん?」

横からそんな呟き。

分かったように言われるとかなりむかつく。
でも今回ばかりは図星なんだけど。




「あ〜もう苛々する…」

全部あいつのせいだ。

そう決めつけるといささか落ち着かないでもない。





俺を煩わせる記憶は昨日の事。
たまには自分の目で兄弟を見ておいた方がいいだろうと、様子を探りに行った。

別にこれと言って収穫は無かった。
あいつらは街で買い物をしていただけだった。

だけど其処で、俺は思い掛けないものに遭遇してしまった。

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