1:birthday cage

「あんたが未登録?」 

未登録は、はっとした。
先程の女性と同じウロボロスの刻印が左脚にくっきりと刻まれていたからだ。

この人もきっと人間じゃないんだ…。
直感的にそう思うと体が強張り声が出ない。


「…なんかえらく暗いお姫様だねぇ。まあ親が死んだんじゃ仕方ないか?」

「っ…!」

男の言葉に未登録は俯いた。
冷たい床に視線を逸らし、自分が本当に独りになってしまったことを思い出す。
夢であって欲しかったのに、やっぱりあれは夢ではないのだ。

そう、確かに未登録の両親は彼女を此処へ連れてきた人物に、ラストと名乗る者に殺されてしまったのだ。





「貴方は……誰?」





今でも時折、未登録は初めて会った彼にそう訊いた自分を思い出すことがある。
期待していたのかもしれない。
年上ではあったけど自分と歳の近しい青年に。


右も左も分からない子供の自分。
助けて欲しくて。
何かに縋りたくて。






たとえそれが人間ではなくても。





「あ、そっか。ラストから何も聞いてないんだっけ?俺はエンヴィーだよ」

そう言いながら歩み寄ってくる。
思わず未登録の身体が後ろに引いた。


「貴方もホムンクルス、なの?」

「へえ〜よく知ってるねぇ」

エンヴィーは質問を簡単に流し、腰に手を当てて未登録の顔を覗き込む。
後ろがドアで逃げ場がない上に間近で凝視され、未登録は自分がどんどん畏縮していくのが分かった。

向けられる不躾な視線。
怖くて目を逸らすこともできずそれに耐える。


その内、なんて不思議な色の瞳だろうと未登録は瞬いた。


「ふうん?お子様だけどまあまあ可愛いじゃん」

「なっ…」

沈黙を破ったのはあまりに意外な言葉で。
何を言い出すんだろうと未登録は呆気に取られた。

その時、すっとエンヴィーの腕が彼女の顔のすぐ隣に伸びてドアに触れる。

それに気を取られ、視線だけを移した瞬間。



ペロッ


「!?」

唇を伝った生暖かい感触。
未登録の顔はあっという間に真っ赤になった。

今、舐められた…!?

意味不明な行動に未登録は目を丸くしたが、当のエンヴィーは何事もなかったかのようににっこり笑っていた。


「今のはお近づきの印♪」

そしてエンヴィーは唖然としている未登録の耳元に顔を近づけてたかと思うと、






低く、囁いた。





「…まあせいぜい頑張りなよ。処分されないようにね…」




離された顔に浮かんでいたのは
酷く歪んだ笑い。







その日は私の誕生日で、


受け取ったものは両親の死と嘲笑と




そして



無機質な鳥籠だけ。


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