2:浅い眠り

暖かい日差し、穏やかな風。

優しい場所。


もうすぐ パーティーが始まる。








「いやああああ!!」

響いた声に階段を駆け降りる。
一階の床を踏むと濡れていて。

その先に広がる赤い海に人の足が見え心臓がドクンと動く。


「貴方…!何なのっ誰か…っ!!助……」

すぐ近くで聞こえたのは紛れなく母の声で。




「…………」

それ以降、聞こえなくなった。




「お嬢ちゃん綺麗なお洋服ね」

「!?」

気づくと血溜まりの中で一人の女の人が笑っていて。
驚いた私は突然のことに腰が抜けてその場に座り込んだ。


「あら、驚かしちゃったかしら」

黒い髪、紅い瞳。
黒い服、紅い刻印。 

あるのは、血の赤と闇の黒だけ。
そして、手の先端から伸びた長い爪が目に入った。

人に酷似した、人ではないモノ。
…唯一の心当たりはいつか読んだ本の中の――――…





「ホムン……クルス」











「 ちょっと、お前いつまで寝てんの?」

「…ン……」

「…早く起きないと襲うよ〜?」

「う〜…、…ん…えっ、うわあぁっ!?」

目を開けると、彼、エンヴィーが未登録の顔の横に両手をついて覆い被さっていた。
それもかなり呆れた様子で。

「…そんな色気のない悲鳴初めて聞いたよ」

「え!?あれっ…?」

彼女は寝ぼけてきょろきょろする。
また、夢だったのだ。

此処に来て以来、毎晩未登録はあの日の夢を見る。
それが怖くて寝つくのが明け方になってしまうのだ。


「ニ分以内に着替えて出てきなよ?遅れたらお仕置きだからね」

エンヴィーはベッドから降り、なんで俺がガキの世話しなきゃなんないのさ、とぶつぶつ言いながら部屋を出て行った。

「………、はっ」

寝起きでぼうっとしていた未登録は我に返り、遅れると後が怖いので大急ぎで支度をした。

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