2:浅い眠り


「やっと出てきたね」

部屋の前ではエンヴィーが壁に持たれながら腕を組んでいた。
先刻は気づかなかったが今日の彼は相当機嫌が悪いらしく、いつもに増して殺気の孕んだ目をしている。

「あ…の、ラストさんは…」

大抵はラストに指示を仰ぐのに見当たらない。
未登録の質問に彼がぴくりと反応した。

「…おばはん数日帰らないんだよね」

「そう…なの…」

「おかげで俺あんたのお守りさせられてんだよねぇ…」

「え!」

彼が不機嫌な理由が、他ならぬ自分だと気づいた未登録は思わず固まった。
対するエンヴィーは面倒臭そうに溜息を吐く。

「ま、それはさておき、これからはあんたにも働いてもらうよ?」

彼の話だと、どうやら今日は外に出られるようだ。
もしかしたら逃げるチャンスもあるかもしれない、そんなことを思いながら未登録は長い時間を過ごした。







その夜。

未登録はエンヴィーと街に出た。
暗い路地に数人の軍人が歩いているのが見える。

「見張りくらい出来るでしょ?今日はその練習。其処でちゃんと見ときなよ…?」

彼はそう言って笑い、古びた数階建ての建物から飛び降りた。



ほんの一瞬の出来事だった。
声も無く一人の軍人が倒れ、慌てて拳銃を構えた残りの数人もすぐ地面を汚した。

「…!うっ…気持ち、悪……」

未登録は目を逸らした。
吐き気の中であの日のフラッシュバックに耐える。




やっぱりこの人も同じ。あの女のホムンクルスと同じただの人殺しだ。


「あらら、ちゃんと見てろっつったのに何してんの?」

その声にビクッと身体が震えた。
返り血を浴びて笑うエンヴィーの姿に恐怖が走る。

「ひっ…やっ…!やだっ…!来ないで!!」

「ククッ…そういう声も出せるんじゃん」

懇願する未登録を無視し、エンヴィーは目の前まで来ると血のついた指で少女の顎を持ち上げた。


「…いいねその顔」

「……な、んで」

「ん?」

「なんで私を連れて来たの…」

わざわざこんな場面を見せるなんて、未登録には嫌がらせとしか思えなかった。


「長く生きてると暇でしょうがないんだよね…」

「…?…何、言って…」

「でも当分はあんたが楽しませてくれるでしょ?」

その言葉に未登録は目を見開いた。

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