6:瞳に映るもの

「びっくりした…っ」

未登録は立ち止まって息を整える。
二人が追ってくる気配はない。


「………」

アルはちゃんと生きていた。
それだけで十分じゃないか。

そう言い聞かすのに。
心にぽっかりと穴が開いているような虚しさがある。



外に出れば人の顔が見られる。
エド達もいる。


だけど、

自分の姿は見えない。


まるで存在していないみたいだ。




未登録は手を握り締め、ゆっくりと歩き出した。






「おい」

突然聞こえた男の低い声。
振り向くと灰色の服を着た中年の男が立っていた。
見知らぬ男に声を掛けられ警戒した未登録だが、男の姿は見る見る形を変えていった。


「…あ…」

エンヴィーは変身を解き、いつもの姿に戻ると漆黒の髪の合間から黒紫石の瞳を覗かせた。


「勝手に動くなって言った筈だけど。お前何やってんの?」

逃げたと思われても仕方のない状況。
威圧するような姿勢を取るエンヴィーに未登録は息を呑んだ。


「……、まあいいよ。ターゲットの居場所分かったからついてきな」

エドの居場所が掴めない以上、早急に男達を始末する必要があると言うエンヴィー。

灯台下暗しという奴だ。

エド達はまだあのレストランの中だろう。
幾つかのテーブルが壊れ料理が潰れていたから、弁償の為に捕まっていることは容易に想像できる。


「どうして…あの子を監視してるの」

呟きに似た問いにエンヴィーは無言で振り返り、未登録をじっと見つめる。
その視線に促され、未登録はエドとの関係を探られまいと慌てて口を開いた。

「だ、だって…あんなに小さいのに…」

小さいなんて言ってごめんと心の中でエドに謝りながら未登録は返答を待つ。

「…そういや話してなかったね。人柱のこと」

「人柱?」

未登録には何処か原始的な、そしてオカルト的な言葉に聞こえた。
人柱とはなんなのか、エドのことを思うと途端に不安になる。


「あの、それってどういう…」

「お前には関係ないだろ」

無駄話をする暇はないと早々に会話を打ち切り、エンヴィーは一人で歩き出した。

未登録は人柱について聞き出すのを諦め、エンヴィーの後を黙ってついていった。








これから起こるだろう惨劇。



この人といる限り続く闇の道。



怖いと思うのに、


いつか、



それすら薄らいでいくのかな。


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