5:やさしい日







その日、
私はいつもと違う夢を見た。








「う…ん」

ぽかぽかと暖かい。
気持ちが良くて、未登録は擦り寄るように布団に引っついた。

「…?」

何故か、さらさらしたものが腕に当たり纏わりついてくる。


くすぐったい……。


「……え!?」

瞳を開けると綺麗な黒髪が散らばっていて、未登録が布団だと思っていた物は人の形をしていた。




抱き締められている。

しかも自分もしっかりその背中に腕を回していた。
遠慮がちに横目で見ると、その相手が彼だと分かり動揺と緊張が走る。


まさか寝惚けてベッドに引き摺り込んだんじゃ…。

思い切り母親に甘えた夢を見ただけに不安は隠せない。
未登録は恐る恐るすぐ隣にあるエンヴィーの顔を覗き見た。



その一瞬、未登録の思考が止まった。
エンヴィーの睫毛が静かに伏せられていたからだ。


「…人間みたい…」

寝ている所なんて初めて見る。
規則正しく静かな寝息を立てているエンヴィーは、未登録が今まで見てきた中で一番無防備で、そしてあどけない、少年の顔をしていた。

朝方からずっと側に居たのだろうか。
暫く眺めていると今更に端正な顔立ちだと気づき、今の状態が益々恥ずかしくなった。
未登録はどうにか脱出しようともがいたが、ばっちり上に乗られているのでちょっと押したくらいではびくともしない。
それでも暫くじたばたしていると、エンヴィーがぴくりと動いた。


「ん…」

「!!」

「……。……ん…?」

目を覚ましたエンヴィーは、腕の中で固まっている未登録をぼんやり怪訝そうに見下ろした。

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