4:苛立ち

結局、何分経っても未登録は起き上がれずにいた。
早く何処かに行って欲しいという彼女の思いとは裏腹に、黙って未登録を見下ろすエンヴィー。
まるで視姦のような状態が続いた。



「…しょうがないな」

暫くしてエンヴィーは未登録の腰を持ち上げた。

「触らないで!」

「触るな?…お前に言われたくない」

「う…」

弱味なんて見せたくなかったのに思わず抱きついてしまった事が思い出される。


「あいつの餌になりたいなら転がってろ。俺は構わない」

「ッ!」

不安になって静まる未登録。
実のところ部屋まで自力で戻れる自信もなければ、さっきの男から自分の身を守るだけの余力もない。



「…やっと大人しくなったね」

「え。ひゃあ!」

突然ふわっと抱き抱えられ、発熱に紅潮した未登録の頬が赤みを増す。
てっきり肩に担がれると思っていたのだ。


「何、もしかして照れてんの?」

「……。」

「へぇ…」

黙って顔を紅くする未登録に、エンヴィーは少し笑い、こんな事を言った。


「何処も食われなくて良かったね」

「えっ…?」

「だってさ」

「?」

「俺が喰うんだから…ねぇ?」

「――ッ!?」

どうやらエンヴィーは未登録をからかって遊ぶ事にしたらしい。


「お望みなら今すぐ残さず喰べてあげるけど…どうしようか?」

「あ、あの…!?」

この手のことに免疫が無く、悪戯な囁きに顔が真っ赤になる。
未登録自身それに気づきすぐに俯いて顔を隠したが、全部お見通しなのだろう。
エンヴィーは愉しそうにその様子を眺める。

「まんざらでもないみたいだね。ほら…何処から味わって欲しいの?胸?それとも下…」

「!?わ!私!水を取りに…ッ!」


話を逸らすように言うが、エンヴィーは分かってると笑うと、
再び未登録の耳を甘く侵蝕しながら彼女を部屋まで運んでいった。

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