7:猫の記憶-前編-
記憶を辿る限り、
その部屋は誰のものでもなかった。
主要な通路に面しているわりに手狭で、
長らく特定の用途を持たない空き部屋だった。
その部屋の前には、一つの後ろ姿があった。
見慣れない背中。
沈黙する輪郭に覚えるものもなく。
俺が口を開くと、
子供の顔が振り返る。
そんな遠い記憶。
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