6:待罪-後編-



「私が手を貸すはめになるとは思わなかったわ」

建物内に侵入するなり、ラストが口を開いた。

「これで良かったの?お嬢さんの手で石を取り返させる為に連れてきたんでしょう?」

「そのつもりだったんだけどね」

ラストは全部見通していたらしい。
未登録に挽回の機会を作ろうと思っていた。
だけど考えれば考えるほどリスクばかり大きい気がして。

力を増幅させた術師を殺さずに石を取り上げるなんて至難の技だし、生かしておくつもりもない。
向こうも全力で殺しに掛かってくるだろう。

とても未登録に出来る仕事じゃない。
何より、あんな事があって、その直後にまた人間を殺すところを見せるのかと思うと、多少なりとも気が重かった。
少し前の俺なら考えられないことだ。

「お父様には、あいつが仕事成功させたって事にしといてよ」

「あら、随分と虫のいい話ね。…まあいいわ。みすみす取り逃がしたら怒られるのは私だし。
でもあの子、待たせておくのはいいけど変な男に絡まれても知らないわよ」

「やめてくれない、気が散るから」

いつ敵が出てきてもおかしくない、
ぴりぴりとした緊張感の中、二人して静まり返った階段を上っていく。

こんな薄汚い街の直中に、あいつを一人にするのはまずかっただろうか。
かと言って、ラストと二人にする訳にもいかなかった。

「さっさと終わらせて戻るしかないわね」

「そういう事」

一つの扉の前に立つと、俺達は勢いよくドアを破って侵入した。



瞬間、大した量の錬成物がラストを貫き、そのまま廊下の壁に叩き付けた。
勢いよく窓硝子が割れ、錬成物は壁に食い込んで幾つも大穴を開ける。

「い、石は渡さんぞ!これは私の物だ!」

叫び声の主を見つけると、既に次の錬成が始まっていた。
無数に飛んできた鋭利な物質の幾つかが避けきれず身体に突き刺さる。
そんな俺の真横を、黒い矛が通過して男の顔面擦れ擦れの壁に突き刺さった。

ラストはまだ再生し切っていなくて、壁際にその身を固定されたままだ。
俺達が人間じゃないと気づいた男は、驚いた様子で隣部屋に移動する。
ぎょろぎょろと血走った目は、まるで理性の無い獣だった。

「どうやら連れてこなくて正解だったみたいだね…」

再生しつつそう呟くと、頭がぐらついて、僅かに視界が霞んだ。
まだ身体の芯から再生出来ていないような、そんな不快感を連れ、俺は男が逃げ込んだ部屋へ足を踏み入れた。

途端、足元から俄かに明るく照らされる。
部屋の床一面に描かれた大きな陣が光を放って。


「!」


次の瞬間、閃光が辺りを覆い尽くし、白く塗り潰した。

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