3:深い夢

毎日 毎日、
あの日の夢ばかり。






「…頭痛い…」

日暮れ頃になり、未登録はゆっくりと目を覚ました。
頭が妙に熱く、鏡を見ると顔が真っ赤だった。

「熱あるのかな…」

ふらふらと廊下に出る未登録。
すると、冷たく硬い何かがこつんと足に当たった。


それは彼が引っこ抜いたドアの取っ手だった。


「……」

彼は未登録に呆れてそのまま仕事に出たのだろう。
蹴り起こされなかっただけましかもしれない。

だけど。



「なんだ、動けるんじゃん」

未登録はその声に、はっと顔を上げた。


「ッ!」

そしてエンヴィーの服や手足についた、どす黒い血に息を呑む。


「だったらおチビの監視行ってよね〜……って聞いてんの?」


…駄目。


怖がるな。


「?」


怖がるな。


この人の前でだけは。



「…ああ」



「そういや前に可愛い声出してたね…」

彼の声色が変わる。
聴こえたのは異常に大きな心拍音。


「…やめて…」

「まだ何もしてないじゃん」

未登録は目を塞ぎ、屈み込んだ。
あの紅い光景が浮かび上がる。



怖い 怖い 怖い。



「血がそんなに怖い?…なんてね…親の死に様思い出してんでしょ? ククッ、大変だね〜?」

その言葉に、

涙が溢れた。


「っ…」

こんな事で誰が泣くものかと歯を食い縛る。


「まあいいや…今日はもう苛めないであげるよ」

何故か彼は突然そう言い、水飲んだ方が良いんじゃない?と付け加えあっさり去っていった。


その後、部屋に戻って初めて、発熱に滴る汗に気づいた。





未登録はベッドに蹲り、悔しさに震えた。






あの恐怖が暇潰しの一部だなんて、





そんなこと、解りたくもない。

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