3:その日のふたり あれから数日が経っていた。 寝返りをうつ、衣服の下にはもう傷跡もない。 それでも未登録は覚えている。 まざまざと腫れる入り口を、その奥でどろどろと蠢いていた、やり場のない蟠りを。 すっと、彼女は目を開けた。 一瞬虚しくなるほどすんなり意識が明瞭になる。 「……」 まだ目覚めたくはなかった。 未登録は強めに息を吐いて、布団を引っ張りながら眉を寄せる。 布団の中に暗闇を作り出して強引に潜り込もうとする。 だけどすぐに力を抜いた。 目を開けて軽く布団を押し退けると、シーツの上に手をつく。 眠っていたいとぼやいてもメリットはなさそうだった。 彼女の頭は身体が寝ている間中も不眠だった。 夢も見ずにああだこうだと言葉を発し続けていた。 仕方なく起き上がると、代わり映えのない室内が、目覚めた未登録を今日に迎え入れる。 内装も、空気も、匂いも。 何も変わらない。 変わったのは自分だ。 覚えている。 目に見えるものが失われても、お喋りな頭は四六時中、映像つきで何度も事実を見せつけた。 記憶だけが、現在に事実を繋ぎとめていた。 [page select] [目次] site top▲ ×
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