9:帰る場所-前編-

造られたその日からずっと、

壊れるまで永遠に。





ぎこちなく可動する腕に血がこびりつく。
当の昔に錆びついている癖に性懲りもなくまだ動く。



馬鹿長く螺子を巻かれた人形の思考なんて、
お前には想像も及ばないだろう。


だけど、


醜いがらあくたにすら、
矜持は備わるものだ。












「入りなさい」


優しく、生温く、掛かる声。
そういえばあいつを此処へ連れて来た事はない。

取るに足らない存在だったから。






「お父様…」





いつからそう呼んでいたのか。



誰がそう呼べと言ったのか。








全ては、遥か昔の記憶。

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