彼の知らない私の話


※今週(5月9日)発売のネタバレしかないです※
※今週(5月9日)発売のネタバレしかないです※
※今週(5月9日)発売のネタバレしかないです※


※よろしければスクロールしてください※


































それは4年ほど前の話だ。

最近起きた近界民の襲撃により育ての親が亡くなった。そして私はなんらかの理由で連れ去られそうだったらしい。らしい、というのも遠回しに聞いた話で、よくわからないからだ。けれど私は最近できたボーダーという組織の人間に助けられた者の一人であることはわかった。右目の視力と顔の傷を代償に私は今日も生きている。顔と右目以外は軽傷で、けれど家も家族もいない私はずっと片目の生活になれるためということで入院していた。だがそれももう終わりらしい。一週間以内には退院することが今日決まった。家はどうしよう。お金も、どうしたらいいのかわからない。私はこのまま孤児院にでも入れられるのだろうか。未成年の自分だけではできないことが多すぎた。
とぼとぼとしょぼくれながら病院内を歩く。これから先、不安しかなかった。その時だった。ロビーについている大きなテレビから気になる話題が飛び出した。

『次に大規模な近界民の襲撃があったら街の人と自分の家族どっちを守りますか?』

何かの会見だろうか。とある記者が、少年二人にそう問うたのだ。きっと、あの子たちは私と同い年くらいだろう。子供にそんな質問は酷ではないだろうか。私の場合はもう家族はいないので強制的に街の人と答えざるを得ないだろうが。案の定、茶髪(にはいるのだろうか?)の男の子は言葉に詰まっている。ああ、かわいそうだ。きっと家族がいるのだろう。羨ましい。しかし、その男の子の横で、黒髪の少年は簡単な問題を答えるように何事もなく『家族です』と答えていた。余りの言い切りっぷりに私は残った左目を丸くした。

『それはもちろん家族です。家族を守るためにボーダーに入ったので。』

「家族を守る、か……。」

家族を守るため。なんて素敵な立派な志望動機だろうか。
私のように家族を亡くした人にとっては、まあ、そうだな。家族がいるということだけで正直恨めしい。どうして、私の家族がこんな目にあわなければならなかったのか。他でも、いいじゃないか。そう思わずにはいられない。近界民が憎いのかと問われればそうなのかもしれないし、正直いまだに状況が飲み込めないのもあって何も感じないのだけれど。しかしそれは記者にとっては恰好の獲物だったらしい。

『じゃあいざって時は街は守らないってことかい?』

『先の侵攻で親や兄弟を亡くした人もいる。そういう言い方は良くないんじゃないかな?』

そう噛みつく記者たちに茶髪の彼は心配そうに黒髪の彼を見ていた。そんなことも気にせず黒髪の彼は満面の笑みを浮かべ、こう言った。

『家族が大丈夫だと確認できたら戦場に引き返して戦います。家族を亡くされた方もそうでない方もここにいる皆さんの家族もこの身がある限り全力で守ります。家族が無事なら何の心配もないので最後まで思いっきり戦えると思います。』

人に好かれそうな笑顔でとんでもない事を言った彼に私は衝撃を受けた。同い年であろう男の子が考えることなのだろうか。それとも、やらせ?台本通りとか?そう思ったがテレビ越しの彼の瞳は真剣だ。嘘、ではないんだろうな。自分との考えの差に唖然とせざるを得なかった。それと同時に私は嵐山准という一人の人間に興味を持ち、魅入られていたのだろうと今になって思う。

『その時に仲間がいると心強いのでたくさんの人にボーダーを応援してもらえるとうれしいです。ご支援よろしくお願いします!』

彼のその明るい声にこれは運命の出会いだったのだろうと柄にもなく思った。ボーダーか……。身寄りのない私でも、片目しか使えない私でも、ボーダーに入ることはできるだろうか。院長先生に話せば、私を助けてくれたボーダー隊員を知っているのではないだろうか。もしかして、もしかしてと可能性がどんどん私の中で膨らんだ。居ても立っても居られなくなり、来た道を急いで戻る。走らないとか、静かにとか、看護師さんに怒られたけどそれどころではなかった。もしも、私に可能性があるのなら、早く、早く、早く…!







彼の知らない私の話


ーーーーーーーーーーーーーー
あのくだりは卑怯すぎる…好きです…ウッ…
そして柿崎さん空気でごめんなさい。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -