ありったけの愛を君に


愛しい愛しい存在

真っ暗な夜、ぼんやりと照らす月

この環境が俺の活動時間帯だからどうしても血が騒ぎ出す

が、別に。今は。任務な訳では無い

「スクアーロ!!」

まさかの。恋人との。逢瀬

「ったく、遅ぇぞぉ゙」

未だに信じられない

それは俺達の関係のことだけではなく、こんなあまっちょろいこいつがボスになったこと。俺等のトップとなったこと

「つかよぉ、何でわざわざいつも夜中に会うんだ。別に俺は吸血鬼じゃねぇんだから日中でも呼ばれれば行くぜぇ゙?」

ピンっとでこぴん。ちょっと痛がるのを見るのが実は楽しい

「それは決まってるよ。この時間のスクが一番かっこよく見えるから」

それは皮肉なんだろうか

暗殺に身を置く俺達は。別に吸血鬼な訳では無いが夜を好む。真っ暗な世界に体を溶け込ませ、ターゲットの血で染めていく

それが仕事な俺達は。この時間帯には本来の姿が見えやすくなる

だからこそ、関わるようになってからは夜に合わないようにした。余程じゃない限りこいつが命を狙われる場のようなところには行かなかった

そんな場には決まって守護者が警護につくからなぁ゙…俺達がつけば十中八九相手を殺す。実際にあちらさんが行動起こすまでも常に殺気を放ち続ける

そんなんを、こいつには見せたくなかった。少なくとも俺は…最初の出会いからして、その後の関わりからしてんなもん何も意味を成さねぇ、そんなん分かっちゃいる

分かっちゃいるが……

「この時間はね、スクの髪がすごい綺麗なんだ。真っ暗な中、月明かりに照らされて、すごくキラキラしてる」

髪に指を絡めるこいつの、俺を見上げてくるこいつの

「ほら、月が透けて見える。綺麗な銀色」

俺を、想ってくれてるこいつの顔を濁したくない

余計な、黒いモノで染めたくない

「今日は星も綺麗に見えるね」

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、頬を優しく撫でてくる

「スクもさ、たまに舞踏会に顔出したりするんだろ?」

そして風のように離れ、手を差し伸べてくる

「俺をエスコートしてよ」

屈託の無い笑顔

お前は、俺達の仕事内容を知っていたとしても…世界までは知らなくていい

華やかな世界である舞踏会ですら………最後は血に染まるから

「…………1曲踊っていただけますか?」

「喜んで……ぷっ、にっあわねぇー!!」

「うるせぇ゙」

あんまり、踊るのは得意ではない

そして、こいつも得意じゃあない

「何でかなぁ…すごい素敵なシチュエーションの筈なのに何かロマンスの欠片も無いこの感じ」

「俺が相手だからなぁ゙。ロマンス求めるなら跳馬にでもやってもらえ」

しれっと言い放ったら足を思い切り踏まれた。お前…!!

「ディーノさんのとこに行ってもいいの?」

挑発するように首に腕を絡められる

「………んなワケねぇだろ」

その挑発に乗るように、腕を絡め返す

細く白い首筋を…傷付けないように

そして、月明かりの下で口を重ねる

ロマンス、の欠片も無い、お互いを求めるような口付けを

お前は、俺達の世界を知らなくていい

俺の本当の姿を、こんな気持ちを知らなくていい

お前を陥れようとする闇からは、お前が気付く前に、全部俺が消してやる

だから、俺が穏やかになれるように、お前はその笑顔でいろ

お前は………俺が守る…絶対に、もう2度と、死なせはしない


『ありったけの愛を君に』

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あとがき

ありったけの愛を君にシリーズスクアーロver.です

おかしいな。全然シリアスな話の筈じゃなかったのに

本当は髪の毛が月に照らされて綺麗だねと言い、見ず知らずの女性をエスコートするスクに嫉妬して、ふたりで月明かりの下で踊るロマンス溢れる話でした

そんな話のはずでしたがシリアスに。楽しかった。何だかんだつなくん大好きでたまらないスクアーロ

未知の可能性を秘めるスクツナ

2012.12.31



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