右の手と右の手


『なぁなぁおおきくなったらなにになりたい?』

『ぼくはおいしゃさん!!』

『わたしはけーきやさん!!』

『おれはサッカーせんしゅ!!つなくんは?』

『んーとね、おれはね……』



見知っている背中を追いかけながら見知らぬ土地を歩き回る

「なぁシャマルーいつまであるくんだよー」

「お前はさっきからそればっかだな。少し黙ってろ」

さっきから言う度にそればっか返される。もはや時間でも距離でもどれくらい歩かされたか分からない

疲れたし腹減ったし座りたいしむしろ目の前の背中を蹴り飛ばしたい

「お前は黙っててもうるせぇな!!あーだからガキのお守りなんざ嫌だってぇの…」

俺もこいつに面倒見られるの嫌だ

「お。おい、隼人。あそこにいいもんあるぞ。あそこで時間潰してろ」

指差された先は

「んだよ、ショボい公園じゃねぇか。ここでなにし…って!!おい!!シャマル!?」

あんのやろう…!!いなくなりやがった

どうやらあそこで時間を潰すしか無いみたいだ。深い深い溜め息が出る

入ってみりゃそこはやっぱりショボい公園だった

遊具も対して無い。数人同じくらいの奴等が遊んでるが入れるわけがない。ので適当にベンチに座って待つことにする

「なぁなぁおおきくなったらなにになりたい?」

聞こえてくる会話は子供らしいもの

「ぼくはおいしゃさん!!」

そらぁ立派な夢だな

「わたしはけーきやさん!!」

そらぁ可愛らしいこった

「おれはサッカーせんしゅ!!つなくんは?」

「んーとね、おれはね……」

口々に夢を語り出す中、最後のひとりが悩んだ末に出した結果は

「きょだいロボ!!」

目を輝かながら答えるその夢は。もう。何て言うか。あれだな。壮大だよな

「うっわぁ!!やっぱこいつばっかでぇー!!」

周りは野次を飛ばし始める。まぁ当然だよな

「つなくん、にんげんはにんげんにしかなれないんだよ〜?」

「こんなへんなやつほうっておいてあっちいこうぜー!!」

しかし不思議と親近感がわく。それは夢の内容ではないけれど

「えっ、ま、まってよ〜みんな〜!!」

そしてその不思議な奴は見事に周りに置いていかれていた。鈍くせぇ奴…

そしたらそいつと目が合っちまった。そいつはにっこり笑って…おいまじかよ。何で俺のとこにくんだよ

「ぼくね、つな!!きみのなまえは?」

そして自己紹介すんなよ。うっわまじめんどくせぇ。何でこんなことになった

「なまえは??」

その輝かせた目をやめてほしい。なんなんだ俺と仲良くなろうって言うのか…!!

「……………ハヤト」

あまりにも笑顔で見つめてくるから何か言うしか無くて

「はーとくん!!よろしくね!!」

相変わらず笑顔で返してくれるんだが。おいちょっと待て。はーとって誰だ

「ねぇねぇはーちょくん」

はーちょくんって誰だよ!!普通に呼べよ!!!!

「はーとくんのゆめはなぁに?」

さっきこいつらがしていた会話を俺にふってくる。何がしたいのかは…まぁ…分かりやすいけど

「ふふん。聞いて驚けよ?俺の夢はな!!」

『純粋に信じちゃって、子供は可愛いわよね』

『実際になれる訳無いのにね』

『いくら御子息とは言え正妻の子ですらない』

『ボスが認めても周りが許さないな』

『東洋混じりのボスに誰がついていくのか…』

「はーとくん?」

聞いてしまった大人たちの会話を思い出して、目の前が真っ暗になっていく中、俺を呼べてない声に呼び戻された

「はーちょくんのゆめはなぁに?」

もう1回。優しい笑顔で聞いてくる

「お、俺の夢は………俺の夢は!!マフィアの!!ボスだ!!!!」

子供相手にくらい、見栄を張ってもいいじゃねぇか

俺だって。子供なんだから。夢くらい見たっていいじゃねぇか

「はーちょくんボスになりたいのー!?すごいねぇ!!」

目の前の子供は純粋に、輝いた目で俺を見てきた

そんな俺は。純粋に嬉しかった

「………お前は?」

さっき聞いてたけど。もう1回聞かせてほしい

「おれはね!!きょだいロボ!!」

でっかい夢だ

「きょだいロボになって何すんだ?」

「んーとね!!せかいのみんなのためにたたかうの!!へーわにするためにたたかうんだよ!!」

ノロノロなパンチをして。情けない馬力で飛び跳ねて

それでも。何だか大きく見える

「はーちょくんは、まひあのボスでなにするの?」

何だろう。何をしたいんだろう。考えたこと無かった

「そーだな……世界を平和にするために戦う。つまりは、お前のライバルだ!!」

ビシッ!!と指差すときょとんとしたけど、すぐ笑顔に戻った

「じゃあおれたちでせかいをへいわにしていくんだね!!」

ライバル、って意味をよく知らなかったのかもしれない

でも、そんな考え方があるんだなって感心した

「はーとくん、おれたち。またあえるかな?」

夕日が射してきたからそろそろ迎えが来るんだろう。俺の迎えは来るのかな…あの野郎…

「信じてれば。きっとまた会えるさ」

「おれたち、そのときはせかいのへーわのためにたたかってるかな?」

「今の気持ちを忘れてなければきっとな!!」

今度は、俺もちゃんと笑顔で

男同士の約束と言わんばかりに拳をぶつけ合った




「ってことが昔あったらしいんだけど獄寺君覚えてる?」

「いや、あの、ほんっとうに申し訳無いんですけど。正直言って全く」

「大丈夫。俺も覚えてない」

きっかけは最近シャマルと10代目のお母様が偶然会ったとき

俺達の迎えに来ているときに会ったことあったのをお母様が思い出した

当時の様子を部下か何かが見ていたらしく先程リボーンさんから俺達の会話を聞かされていた

正直言うと。シャマルとお母様の会話の様子で思い出した。その時の子供がまさか10代目とは思ってもみなかった。むしろ今の今までこの出来事を忘れていた

「でも不思議だよね」

俺の方を向く10代目はいつもと変わらない笑顔で

「俺達、本当に出会えて。世界の平和のために戦ってる」

拳を突き出してくれたから、あの時のように突き返す

「お互い、巨大ロボにもボスにもなれなかったけど一緒に戦ってる」

それでもいいんですよ。今こうして、一緒に戦っているから

「これからもよろしくね、はーとくん」

何て、悪戯っ子なはにかみ笑いに思わず苦笑いしてしまったけど

「はい、これからもよろしくお願いします」

これからも。あなたについていきます

これからも。あなたと共に


--------------------------

あとがき

わーい!!1度書いてみたかったんです。実は子供の時に会っていました設定

つなくんが何で巨大ロボになりたかったのかなって考えたんです。かっこよくて強いからなんじゃないかなって。その強さで平和のために戦う姿に憧れたんじゃないかなって

そして、子供の時からちょっとした孤独とかもやもやを感じていた獄寺君を、子供の時からつなくんは全部包み込んであげてたらいいなって思って

できた話がこれでした。なんてこったい


2012.11.09



目次/TOP
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -