メカニックは××に恋をした


ウチの初恋は。確か、パソコンの基盤だったと思う


元々。パソコンに憧れを示していた

機械の箱がこんなにも便利で。こんなにもウチを魅了していく

知れば知るほど不思議で。ある日、解体をしてみた

中にはどんな生物が住んでいるのか…本気でそう考えながらネジを1つ1つ外した

でもその中には生物はいなかった

中にいたのは複数の導線とそれらと繋がっていた、様々なチップが混在する基盤


衝撃


この一言しか出てこなかった

全ては。ここから始まっている

この1つの個体は何を示すのか、この横の小さなチップは?じゃあその倍の長さがあるこれは?

知りたくて知りたくて。調べて解体して知れると頬が紅潮した

紛れもなく。あれは恋だった

次第に。機械にしか興味を示さなくなった。人間より機械の方がすごいと思った

ある日はモニターに。ある日はスピーカーに。ある日は導線に。ある日は回線に

恋する相手はころころ変わるけれど

知れば知るほど不思議で。愛しさが増して

作るのも楽しかった。考えるのも、触るのも、携わること何もかもが楽しかった


ある日。正一に聞いてみた

「メンテナンスって。性行為だと思わない?」

きっと分かってくれる。彼もまた、機械に恋をしている人種だから

「……スパナ。何を…言ってるんだい?」

結果は。冷たい視線を送られただけだった

やっぱウチは機械しか信じない

メンテナンスは。性行為だって。ウチは思うんだ

愛情を持って、どうすれば更に良くなれるのかひとつひとつ触れていって

ウチが下手なことをしたら。機嫌を損ねてしまう

うまくいけば。性能が上がった機械達と、素晴らしく恍惚としたウチがそこには存在する

きもちいい

そんなウチの。機械としては最高傑作で、きっと最後の恋愛対象


モスカ


これ程素晴らしい種はいない

ウチの発案した機械と言うわけでは無かったけれど

長い年月メンテナンス…ウチ的に現すと性行為を重ねて重ねて改良していった

そして。まだまだ無限の可能性を秘めている。素晴らしい


そして。ある日


その最高の恋人に乗りながら戦うことをしばしばやっていたウチは

その日も。とある人物と戦っていた

そこにいた人物は

ウチの最高傑作と対等に渡り合った

考えたことも無いような手段で立ち向かい

予想外のことをしてきて

最後に。綺麗な炎で。そして。中途半端な威力で

落ちた

「…………ジャッポーネ」

ジャッポーネは。機械程で無くてもウチに衝撃を沢山与えていった

でも。彼は何かが違う

もし。最後の技を完璧に放てていたら。どれ程の威力が見られたのか

あの綺麗な炎と瞳はどうなるのか

「もしかして…X BURNERのこと…?」

技名を聞いたとき

戦いの時とは違う、少し怯えたような無垢な瞳

戦いの時のあの力強さ

この相反するふたつがぶつかって

初恋に落ちたあの瞬間と。同じだけの衝撃を。初めて受けた

技を完成させたい

ウチの手で完成させたい

また新しい恋愛をしてしまった

機械ではない。X BURNERと言う技に





「スパナー!!正一君!!差し入れ持ってきたよー!!」

恋人達とにらめっこをしていたら。ボンゴレがやってきた

「ありがとう。コンタクトの調子はどう?」

「問題無いよ。あ、これリクエストされてた梅じゃこおにぎり。緑茶と一緒に食べてみて」

Oh…!!オニギーリ…!!

X BURNERを放つ手から受け取った

あれから。技は完成した

初めて見た時。頬が。紅潮した

でも。今回はおかしい

満足しない

次を求めるなら分かる。もっとよくしたいとか、そういう不満なら

そうではない

じゃあ何でなのか。分からない

完成したのに。ウチのメンテナンスをベースに彼は完成させてくれたのに

「あ、今回のおにぎりな。俺が握ったからちょっと形悪いんだ。ごめんね」

ボンゴレが…握った…

あれ?何か。きゅんってした

あ。何か。頬が紅潮しそう

ジャッポーネ文化のモエ…

でも。モエって。周囲と共有したい

でも。このモエは

「今回は全部ボンゴレが握ったのか?」

「え?うん。そうだよ」

共用したくない

幸い正一は寝てる。しばらくは起きない

ウチが全部食べよう

「せっかくだからお茶入れてくるよ。休憩してて」

緑茶を入れてくれる彼の後ろ姿を眺めた

髪の毛やわらかそう。触りたい

前に服を脱がせた時。細くて弱そうだった

でももしかしたら鍛えられたかもしれない。見たい

ウチと身長どれくらい違うっけ。調べたい


メンテナンス…したい


「……………あ」

ウチに。雷が落ちた

「はい、お疲れ様」

再び。X BURNERを打つ手から受け取った

「じゃあ、俺帰るね。また来るから」

帰ろうとした彼を掴んで

「────────…」

……………うん

「満足した」

彼は目を見開いて止まってる

ウチは貰ったオニギーリを食べた。うまい

ボンゴレからはブドウの味がした

ウチのイチゴ味は分かったかな

「ねぇ、ボンゴレ。今度メンテナンスさせてよ」

我に帰った彼はイチゴの様な顔になって逃げてしまったけど

ウチはボンゴレが握ってくれたオニギーリを更に食べながら、ボンゴレが入れてくれた緑茶を堪能した

これが。本当の



初恋


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あとがき

スパナの謎な独り言になりました

題名も散々悩んでいいのが見つかりませんでした

メカニックは人間に恋をした

とか

人間に恋した機械人間

とか考えたんですがいまいちで却下しちゃいました。英語にしたら長かったんだ

humanって単語を入れたかっただけとかまさかそんな

機械にしかときめかない性格だったのにひとりの少年に恋してしまった電波みたいなスパナにしたかった

最後はまさかのちゅうしちゃった的な感じです。絶対この後つなくん普通に会ってくれないよね


2012.07.23



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