俺が好きなお前が好きな俺


死ネタ注意
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『ほらほら、山本、早くっ』

『待てって!!そんな引っ張るなって!!』

『何言ってんの!!今日の主役がいなきゃ始まらないでしょ?はいっ、チーズ!!』

『にっ!!』

『うんっ。いい笑顔!!あ、ボール、俺が貰ってもいい?』

『勿論!!』

お前の笑顔が見れるなら、何だって

全部、ぜんぶ、あげるよ






「…………………づぁー」


懐かしい夢を見た

いつから寝ちまってたかな……久しくこの頃の夢なんて見てなかったのに

今の。この状況かもしれない

なぁ、そうだよな。ツナ

掌を上にかざした

かざした手には特に何も見られない、只の、在り来たりな青年の手

無気力に挙げられている手は。生々しい感触を覚えている


未だに。覚えてる


今まで何も感じなかったのに。あの時は。あの時だけは

『ねぇ。山本』

俺を呼んでくれるお前の声はいつでも俺の助けで、支えで、救われてて

『俺のこと。好き?』

うん。大好き

『俺も。ねぇ。山本』

俺のずっとずっと大好きな人

『俺はね…野球してた頃の山本が好きだけどね、今の山本も好き』

なぁ、ツナ、俺はね

『だからね。大好きな山本に俺を殺してほしいの。俺が』

俺は

『俺が。山本の好きな俺でいるうちに』

俺、は

『俺は死ぬなら。山本が好きな俺でいるうちに大好きな山本に殺されたいの』


そうやって、俺を見た君は

君は









最初に何か手応えがあって

あぁでもやっぱ。肉を切ったなぁって何と無く分かって

自分にかかってきた血が温かくて

今までこんなこと考えなかったのに。感じなかったのに

そして床に横たわる君は

君は






「おい山本!!今のは一体何の…っ」

ツナが倒れた時の音に気付いて駆け付けたんだろう

床に横たわる血まみれのツナと立って刀を持って血まみれの俺とくればこれ以上な分かりやすいものはない

「てめぇ…………山本おおおぉ!!」

勿論走って俺のとこに来ようとして

その彼の足を止めたのは床にいた彼で

「……………おれが、たのんだの」

そう言った君は

君は

「ふたりとも、ありがとう」

そう言って目を閉じた君は

君は








「………………」

「……………てやる」

何だよ…

「殺してやるっ!!!!!!」

そう言いながら俺の首をしめてきたお前は

すごい目だった。あぁ、本当に俺が憎いんだなぁって、思わされる

首にかかる力が強くて。気道が止められて。苦しくて息できなくてあぁ、おれ、もう

「っ、げっほ!!げほっ…かはっ………はぁっ…はぁ…っ!!」

しぬんだな


って思った瞬間に力が緩んで

空気の通り道がいきなり開いて体がついていかなかった…

「げほっ…な、んで……」

殺さなかったんだよ

「てめぇを…殺したくて、殺したくて、仕方がねぇ」

じゃあ、何で

「っ、何で殺さねぇんだよ!?」

あぁ、そうだ。俺は、別に、誰だってよかったから

殺されたかったんだ

「お前が大好きな10代目を殺した奴が目の前にいんだぞ!?なのに、何でお前は」

「俺が大好きな10代目がお前を大好きだったんだぞ!?それをっ…それ、を………ちくしょう…っ」

俺から手を離して床に項垂れたお前は

「何で…何で俺じゃなかったんですか…じゅうだいめぇ…」

泣いて、泣いて
ツナのとこまで行って

ツナに被さりながら叫んで泣いてた。意外…獄寺って。こんな泣き方すんだ














俺の処分が決まった

ファミリー全体の前で公開処刑

拷問されながら、苦しみながら、何千人と言う団体の目の前で死んでいく

あぁ、俺にはお似合いじゃないか


小僧が気を使ってくれて、ツナの部屋に入らせてくれた。どうせだからここで悔いを無くしておけって

実際、気を使ってくれたのは小僧じゃなくて、小僧に言ってくれた獄寺だったけど


人の部屋を漁るなんてのはあまり好きではないけど。ツナの部屋だから。興味無い訳では無い

いい年なんだからエロ本とか隠してたんじゃねぇかな。なんて考えられるくらいの余裕がある自分が信じられない

そこに一冊のアルバムを見付けた

「ハハッ。懐かしー」

そのアルバムの最初は主に俺等が出会った頃の。中学の頃の写真だった

『ねぇ、山本。俺はね…野球してた頃の山本が好きだけどね、今の山本も好き』

「……………」

ページをめくる音だけが響いて


「……………嘘つき」

俺の声が溢れた

「……………っ、う」

嘘つき。ツナは嘘つきだ

後の方になると時代が進んで、今の俺達になってる

何だよ………一番多いの。野球してる俺の写真じゃねぇか

ねぇ。それでもさ。本当に、今の俺でも好きだった?

俺、お前の顔が思い出せない。殺してと言った君は、倒れた時の君は、最後の言葉を残した君は、目を閉じた君は。どんな顔で笑った?笑ってた?

俺は…

『何言ってんの!!今日の主役がいなきゃ始まらないでしょ?はいっ、チーズ!!…うんっ。いい笑顔!!あ、ボール、俺が貰ってもいい?』

あの頃の君の笑顔が何より眩しくて。それ以上の笑顔を見た覚えが無くて。何も思い出せない

『俺は死ぬなら。山本が好きな俺でいるうちに大好きな山本に殺されたいの』

何で。俺はあの時に。彼を刺してしまったんだろう

俺だって、どんなお前でも好きなのに

あれ。でも。表情を思い出せないのにお前が好きって言える?

言えるよ。好きだよ、好きだよ。大好きだよツナ

あぁ、そっか。ツナもそうだったんだ。俺を好きでいてくれたんだ

「つなあぁ………」

あの時の獄寺みたいに俺も泣き叫んだ

ツナの名前を呼びながら泣き続けた

俺達は嘘つきだけど、嘘ついてない

何で俺はあの時彼を刺してしまったんだろう

お前が今の俺でも好きでいてくれるみたいに、俺もこれからのお前が大好きだよって何で言えなかったんだろう

お互い。お互いを見るあまりにお互いを見なかったから

殺してくれって言っちゃったんだ。殺しちゃったんだ

泣いて。泣いて…………












「……………頭…いてぇ…」

そっか……俺。泣き疲れていつの間にか寝てたんだ。ガキかよ

「ツナ……」

俺はもうすぐ死ぬけど。死んだらお前に会えるかな

俺にお似合いなのは公開処刑なんだろうけど。どうせ死ぬなら

お前を殺した俺の手で俺を殺したい

「……………また。お前に会えますように」

いい景色。高い位置。見晴らしがいい。窓を開ければ心地いい風が入ってくる


空を仰ぎ見て


俺は飛んだ──────…

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あとがき

┌(_ _)┐
※土下座


おかしいよ…私、山ツナ大好きなんですよ…ほのぼので照れあったりちょっと余裕な山本とか獄寺にぐだぐだ言われながらも仲良くしてるみたいな山ツナ大好きなんですよ

こんなの絶対おかしいよ…何で…幸せなこいつらの話が書けないんだ…これはちょっと悲しすぎる

いや、思い付いた話のまま書けたから私自身満足はしてると思いながらも納得できない。何でこんな話を考えた

でもこんな展開も好きな私なんですごめんなさい

私。そろそろ山本好きの方々に嫌われても仕方無いと思う。いや…今更だ…!!


2011.12.30



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