他己愛主義者の自己主義


きっと



そう、これは、きっと……










「…………ん」

腕の中でもぞもぞと動く小さくて愛しい存在

服を隔てずに触れ合う肌が俺は好きで……ツナはどうか分からないけども

目を覚ますかと見守っていたらただ身動ぎしただけだった

気付かれないように優しく、静かに、抱き締めている腕の力を強めた

鼻をくすぐる茶色いふわふわな髪。思わず顔を埋めた

何か、一気に自分が変態に感じて苦笑いした


まだ、腕の中ですやすやと寝ている

大分、背は伸びたんだけれども…やっぱ俺には追い付かなくて、体格もしっかりはしているんだけどガッチリしてるわけではなくて

こんなにも細くて小さい体で色んなものを抱えて、色んなものを守ろうとしている

この小さい体を離したくないと、腕の中に閉じ込めておきたいと、誰にも渡したくないと願ってしまうのは…



「……………でぃーのさん」

少し舌っ足らずな声が聞こえて覗いてみたらどうやら目を覚ましたようだ

起きたてだからまだ目はしょぼしょぼした感じ。相変わらず可愛い寝顔

「おはよう、ツナ」


目元に優しくキスをした
くすぐったそうにするのがまた愛しい

俺の腕に頭を乗せてのんびりとしている

髪の毛を撫でているとまた寝そうになっている

「もう少し、寝るか?」

そのまま撫でていた手を目元へ、そして頬に滑らせた

優しく、やさしく、壊れ物を扱うように

「おきなきゃっておもうんですが………でぃーのさんの手が…きもちくて…」

……………ばっか
そんな顔でそんな声でそんな眼差しで言うなよ

口を形に沿って撫で、耳へと移動させ、ふにふにと揉んでみた

「んっ、くすぐったぃ…」

「ツナが悪い。ツナが俺を」


誘うから


無自覚の彼の誘惑
堪えきれなくて口を重ねた
ちっせぇ口

ちっせぇ舌

全部、全部、食べたい

「…………っ」

息苦しくなって重ねていた口を離す

起きたてだから、まだ頭も何も働いてないから

「…………は…ぁ…」


ほら、また、そうやって

俺を誘うんだから








「……………ディーノさんの変態」

上目遣いで睨まれても可愛いだけなんだがな

俺の腕枕で寝そべっている。俺はツナの頭を撫でる

そう、結局、理性は崩壊したので美味しく食べてしまった

「ツナ可愛い」

こめかみにキスをした

そして、額に、目元に、鼻に、頬に、そして最後に


「……ねぇ、ディーノさん」


口に、キスをしようとしたところで話しかけられた

その目は、とても真剣なもの

目を逸らさせない。丸い、琥珀色の瞳。まるで…吸い込まれそうになる

「ディーノさんの………あなたの、世界の中心は何ですか?」

小さくて、可愛い口から発された言葉は予想しなかった言葉

とても、重く感じた

俺の世界の中心……
それを、聞こうと言うのか

「…………ツナの中心は?」


あぁ、俺って、何て狡い大人なんだろう

質問に質問を返してはいけない、何て当たり前のことを、8つも年下の奴にした

「………皆にね、この質問してみるんです。特に、こういう時」


こういう時って言うのは正に今この時

あぁ、分かってる
ツナが、俺だけのものじゃないってこと


「皆、ね………世界の中心は、俺だって言うんです…」


全員、出す答えは1つしか無いだろう。皆、ツナと答えるだろう


「…皆がね、世界の中心は俺だって言ってくれるなら、俺の周りには皆がいるなら」


少しだけ、震えた声、体
とても、ぐらぐらとした、心


「俺は……皆のために、俺が中心となって、生きます。だから、俺の世界の中心も、沢田綱吉なんです」


あやすように、ぎゅっと抱き締めて、背中を擦ってやった

重いよな

彼奴等皆が、お前を軸にして生きている

押し潰されそうになるよな

自分が倒れちゃいけないって


「ねぇ………ディーノさんは…?」


───ごめんな


その単語すら言えなかった

知っても尚、言わないし、言えなかった


俺もな、そうなんだよ


お前に依存してる

お前を中心に生きてる


そして


この腕に抱き止めていたい

守ってやりたい

余すこと無く、優しさと愛情を注ぎたい


だって、ツナを…



愛してるから



こんなにも、年下のコイツを、自分の世界の中心にして

ツナの全てを手に入れたいだなんて考えてしまう


それは、きっと


そう、これは、きっと……



究極のエゴイスト




そんなことを思いながら、全ての答えを誤魔化すように

何もかも忘れるように


俺達は再び体を重ねた


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あとがき

自分の世界の中心とか軸とかの話って何だか書いてて楽しいです

守護者達が、中心をツナと言うのはいいと思うんだ。自分のボスだし、歳近いし。ランボは年上を慕ってるわけだし

でも、ディーノさんの、世界の中心が8個も年下で同じファミリーですらないツナとかだとさ、もう、何て子供な人なんだろうって思ってしまう

何故か、彼だけはすごい子供に感じて、究極のエゴイストって思ってしまう

そんなことを考えながら勢いで書いたお話でした

そしたら同じ言葉の繰り返しになっていたりしてとてももやもやします。とても悔しいです

2011.06.16



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