初めての





人の幸せを願う

俺は、誰相手にもできるほど器用な人間ではないけど

好きな人にくらいなら、できるんじゃないかって。そう思ってる



「な、ツナ……」

「んー?」

昼下がり。珍しくお互い休みだからツナの部屋遊びに来てお茶を入れてもらっている

「あ、俺チョコ食べたい」

「ん」

菓子は俺が持参。色んな洋菓子をひとまず持ってきてみた。実を言えば俺は和菓子の方が好きなんだけど

「はい、緑茶。紅茶よりこっちでしょ?」

湯飲みを渡された。ほっとする香り

「てか俺に気を使わずお饅頭とかでもいいのに。お饅頭や大福も普通に好きだよ?」

「でも洋菓子は大好きだろ?ツナこそ俺に気を使わず紅茶入れてよかったのに」

お互いに譲り合った結果はちぐはぐな結果。これはおあいこなのな

「んで?」

「ん?」

紅茶じゃなくて緑茶だから。熱いから。ふーふーしながらずずーっと互いに飲む俺達。老人か

「何か聞きたかったんでしょ?」

あぁー……そか。そういやそんな感じだった

ツナリクエストのチョコを開封して一粒取り出して

「……………俺と笹川が結婚するって言ったらどうする?」

予想通りあんぐり口を開けて呆けたからチョコを突っ込んだ

「むぐ………んーと…?山本は京子のこと好きなの?」

「いんや」

まさか。好きどころか…

「やっぱり。それでそんなこと聞かれても答えられないっしょ」

食べ終えたら早速次のを取り出した

「なぁんかさ。山本は人に対して。誰に対しても割り切って生きてるよね」

案外ストレートに言ってくれるのなぁ

「自分を見せてそうで見せてない。見させない。すごく分かりやすいもん。あぁ山本はこの人あまり好きじゃないなぁって」

あちゃあ…………そしたら。今まで嫌な思いさせてきたかもなぁ

「更に言えばこの人のこと好きなんだなぁってのもあまり見ないけどね。親父さんなんかは別だけど…何か違うと言うか」

だってよ………昔っから。感情を隠して生きてきたから。辛くても我慢してきたから。元気よく見せないと心配されるから。それが、嫌で嫌で……

思わず言いそうになった本音は緑茶と一緒に飲み込んだ

「ほら。また隠した」

「ほんっとツナは何でも見抜くのなぁ」

超直感とは違う気がする。こいつ自身の性格と言うか人となりだと思う

また飲み込むかもしれないのに。飲み込ませるためか何も考えてないのか緑茶のおかわりを入れてくれた

「まぁ、でも……結果として。京子と山本が結婚するってなっても、きっと俺は祝福したよ」

湯飲みを再び前に置いて

「大好きな2人の幸せを願った」

今度はツナの方からチョコをくれた

「………んあー。やっぱツナってすげー」

さっきのツナみたいに。俺も早速次のを取った

「俺さ………好きな人の幸せなら願えると思ってた」

でも開けなかった

「全ての人なんて無理だけど、好きな人くらいなら大丈夫だと思ってた。でもそうじゃねぇんだ」

これは……飲み込みたくなかったから。何と無く

「俺と……幸せになれないから…そいつのことすら…嫌いになりそうになっちまいそうで」

ツナとは目を合わせられなかった

俺は何を言ってるんだろう

せっかくの休みに。お菓子をつまみながら。緑茶を飲みながら。他愛もない話をするはずだったのに

「…………山本は。それぐらいその人のことが好きなんだね」

手にあった未開封のチョコを取られて

「山本は、すごい優しい人だって俺は知ってる。皆を心配させまいと感情を隠して。嫌いな人でも傷付けないようにして。好きな人を嫌いになってしまいそうなほど大好きなんだから」

口に運んでくれた

何でかな…さっきより。しょっぱい

「だから………泣かないで」

抱き締めてくれた小さな彼は

どこか大きく感じた




「……………すっげぇ恥ずかしい」

最悪だ………何で俺。泣いてんだ。馬鹿だろ

「いいじゃん。山本滅多に泣かないんだから。貴重なもん見たなぁ…可愛かった!!」

おま……

「そんなこと言うともうチョコやらないのな」

「わっ!!ごめんっごめんっっ」

こう言うときは身長高い方が有利。必死に謝って取ろうとするお前の方が。俺はよっぽど可愛いと思う

「それにしても。山本に好きな人がいたとか初耳かも」

そりゃそうだ。気付かれないようにどんだけ必死になってたと思ってんだよ

「………その人さ。俺の初恋」

実らないと知りつつも。ずっとずーっと、想い続けていた

「その初恋の人。どんな人?」

無邪気に聞いてくる彼に、少しだけ心が痛む

「んとなー。俺からのファーストキスをあげた人」

寝てる時に内緒でしてしまった拙いたった一回のキス

「えっ、何それ。超ロマンチックじゃん。ずっと想い続けてるとかすごい」

ロマンチックな訳がない

起きないか心配で、誰か来ないか心配で、バレないか心配で、嫌われないか心配で

そんなファーストキス

「ん……その人。幸せだよ。山本にこんなに思われてんだもん」

決して気付かれないであろう恋心

これはいつか…どこかへ行ってしまうのか。何てたまに考えるけど

考えて何年経ったかなんて。思い出すのも馬鹿らしい

「……………な、ツナ」

「ん?」

誓いの言葉も言えない

誓いのキスもできない

この口は

「結婚……………おめでとう」

ささやかながらにも

好きな人の祝福をした

「ん、ありがとう」

好きな人の


幸せを願って


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あとがき

意外に短い話…そしてラストに書きたいこと完璧に忘れてこの結果になった。どうしてこうなった

ちゃんとした描写を入れたかったのに無理だったのがツナの結婚相手。はい。京子ちゃんです。呼び捨てなのは奥さんだからですね

山本が嫌な思いさせちまったかなってのは京子ちゃんに対する態度ですねはい

山本は好き過ぎて嫌いになっちゃったりもする子だと思うんですよ。おめでとうとかちゃんと言うけど、純粋には素直には言えない不器用な子だと思う

あとがき頭にも書きましたが本当書きたいこと忘れちゃったのが悔しすぎます。わぁお

んむ………幸せな山ツナ書けないもんかね←


2011.11.29



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