大人の意地、子供の喧嘩


お互いに、きっと、むしゃくしゃしてたんだと思う






「じゃあ、次はこんな感じだねぇ。よろしくね、獄寺君」


「はいっ!!お任せください」


へらへらした笑顔

周りからは幾分落ち着いてきたと言われるコイツ


どこがだ?何も変わってねぇ


ツナにはいつでもあの笑顔を浮かべて、ツナ以外の奴等には敵味方関係無く鋭い眼光を向けてくる


変わっちゃいないさ


何も


「獄寺君は大人になったね〜!!」


「そそそそんな!!」





部屋を後にした俺等
獄寺が立場上一番ツナに近いから、今回は何も言われなかった


あぁ、ちくしょう


「なぁ、獄寺」


結局よぉ


「お前ってさ、昔っから何も変わんねぇよな」


ほら、すごい顔


ほら、


「……………っ」


「もういっぺん言ってみろよ」


そうやって、簡単に拳を奮って俺を殴った


「ツナはあぁ言ってっけどよ、結局ガキのまんまなのな」


感情に振り回され、自分の気に入らないものは全て排除しようとして、世界に2人だけを残したがるんだろ?


「相変わらず………ツナにだけへらへらしやがってよ。見てて………反吐が出るぜっ!!!!!!」


仕返しに殴り返した

挑発したのは俺だけど、こいつはまんまと喧嘩を買って、こいつから殴ってきた


なら、もう俺も手を出すぜ


「へらへらだぁ…?よく言うぜ。テメェこそベタベタ汚ねぇ手で10代目触るんじゃねぇよ!!!!!!」


避けて、カウンターを喰らわしてやった


だって、こいつの一方的感情で来てんだもん。どうしようとしてんのかバレバレ

楽勝楽勝


なんて、油断しちまったな


「…ってぇ…この石頭…」


やっべ。舌噛んじまったよ。いてぇ


「お互い様だろ?」


それからもお互いその繰り返し


俺が殴って、蹴って、ぶっ飛ばして


獄寺に殴られて、蹴られて、ぶっ飛ばされて


「コラー!!貴様等何をしとるかー!!!!」


あららら。ギャラリー集まってきちゃったよ。守護者の一部に俺等の部下すらいる。さすがに幹部クラスはめんどくせぇな…


ランボは影で恐怖で固まってる。よし、アウトオブ眼中。先輩になら


「獄寺と俺が男として拳で語り合ってるだけでーす」

「そうかー!!それならば止めるわけにはいかない!!極限にやり合え!!俺が見届けるぞ!!!!」


単純で助かった
獄寺も否定はしなかった
そりゃあここまで来て逃げらんねぇし無様な姿も見せらんねぇよな


お互い、理由なんざ無い


お互いに、お互いのことが大嫌いなんだ


イライラするんだ、むしゃくしゃするんだ


俺は、常にツナの横にいるお前が羨ましい


でも、お前は、常にツナに触れられる俺を羨ましがってる


お互い、無い物ねだりをしている


「ハァ………ハァ…っ、てめ…やんじゃねぇか…」


「ハッ………当たり前だろ……何年右腕狙ってると思ってんのな」


言葉に釣られてまた掴みかかってきた。けど…ちょっと避けきれなかったなぁ


「ご、ふ………っ」


あぁー………ちっくしょー………おもてぇんだよ


「……………っ、死んでも言わねぇ」


そして、また、殴られた


あぁ、分かった。あれだろ

お前、今、俺が羨ましいって言おうとしたんだろ


でも絶対ェ……それこそ死んでも言わねぇよな。テメェが羨ましい、本当は10代目に触れたいってな


俺がツナの隣にいて………


お前が常にツナに触れられてたら……


俺等3人は…どうなったのかな………


なぁ、でも獄寺よぉ。気付いてるか?



俺等、どっちの立場にいてもな………



「2人とも!!!!!!そ・こ・ま・で!!!!!!!!」


殴られ続け軽く飛びかけた意識の中に聞こえたアイツの声


あー何でだろ…何で来ちまった?今、俺も獄寺も本気で殴り合ってたのに


お互いのむしゃくしゃも、お互いへのイラつきも、全て本気でぶつけ合ってた


あーでも何でだろ。俺、めっちゃ、お前に会いたかった


「2人はどうしてこんな殴り合いなんてしてるの」

「違うぞ沢田!!アイツ等は男同士の拳を交えていただけであって」


「あ、すみません。お兄さん少し黙っててください。獄寺君」


ツナに睨まれて獄寺は俺を離した。ってぇー……結構響くなぁ

「で、何でこんなことしてたの?」

言えるわけねぇ。それこそ、先輩の言ったことが正しいくらいだ。てかあれ最初に言ったの俺か


「もう…2人が内容を言わないのは余程のことだとは思うけどね……幹部である2人がこんなにも部下の前で殴り合いしてるのはどうなの?おかしいでしょ!!」


おかしいのはこっちだよ。怒られてるハズなのにあんま反省できねぇ。ツナ可愛いんだもん


「………情けないと思わないの。あの泣き虫ランボが大泣きしながら俺の部屋飛び込んできて喧嘩を止めてくれって俺に必死に頼んできたんだよ!?しっかり反省して!!」


いや、何を反省するかわかんねぇし。むしろ先に喧嘩してたの俺等でアイツ等が勝手に見に来ただけだし


横目で獄寺を見てみた。あーあ、かなり焦ってるよこれ。かっこ悪ぃーのな


「全く……………じゃあこれ最後に。喧嘩の原因起こしたのどっち」


黙りな俺等。微妙だよなぁ…………いや…


「………俺から、殴りました」


掠れて、口内が腫れたせいかあまり声が出てない。何だよこれ。俺がかっこ悪ぃじゃん


「獄寺が殴るようけしかけたのは俺なのな」


ツナが獄寺の前まで行ってから、口を開いた。あぁちぐはぐだこれ

まぁ………喧嘩売ったの俺だもんな


「ふーん、そっかぁ。山本なのかぁ……………」


あ、超笑顔。超可愛い。思わずこっちも、へらって笑っちまった









「うわああああぁっ!!!!ボンゴレ!!見てるこちらが痛いです!!」

「おぉ……さすが沢田。極限にいいパンチだ。やはりお前もボクシングの世界にも来るべきだ。うむ」


外野がごちゃごちゃうるせぇ……部下もざわついてやがる。てかよぉ、部下の前で殴り合いがどうの言った奴誰だよ?


部下の前でボスに殴られる幹部ってどうよ?


つまりは、すっげぇ重い右ストレートを喰らった。獄寺よりも重てぇ……


あぁ…でも、何か。ツナ、本気で俺に対して怒ってる。やっべ、何か嬉しい。こいつの重いパンチ受けたのが獄寺じゃなくて俺とか嬉しすぎる


俺すっげぇMみたい
あぁ、でも………


ツナの笑顔も、涙も、苦しさも、悲しさも、怒りも、虐げすらも全て欲しい。お前から俺に向ける全部が愛しい。それこそ、きっと嫌悪感すらも


「じゅ、じゅうだいめ………っ!?」


すぐ横でいい音が響いた。何かと言うとツナが獄寺を叩いた音。平手打ちかぁ。俺の方が喰らったの重いから何か無駄に優越感がある


「山本は喧嘩をけしかけない!!獄寺君がすぐ買うって分かってやったんでしょ!!獄寺君も!!!!やっぱり君は大人になってない!!何で喧嘩を買うの!!!!!!」


ちょ、待てよツナ。必死に叫ぶ言葉がそれかよ


「2人とももう子供じゃないから喧嘩しちゃ駄目だろ!!!!!!!!!!」


この言葉が響いた時、辺りに音は存在していなかった


「……………ぷっ」


そんな中、一番最初に発された音は


「あっはっはっはっは!!!!ツナ何それ!!お前の方がよっぽど子供みてぇ!!!!」


俺の大きな笑い声


「えっ!!何で笑うんだよ山本!!って!!何で皆も笑ってんの!?」


ポカーンとしてる奴もいればクスクス笑いをする奴等も。ツナだけ焦ってる


本当おかしいなぁ。コイツは不思議な奴。だって、さっきまで俺と獄寺のせいでここの場は緊張感に溢れていたのに


あっという間に和んだ。皆、みんな、わらってる






その後も俺等はガッツリ怒られた。でも、俺は、やっぱ本気で怒ってくれるのが嬉しいんだよなぁヘラヘラしててまた怒られた


獄寺はいたたまれない顔してた。怒られる度にしょげて声が小さくなってまた怒られた



終わった後は何故か2人並んで喫煙タイム


結局さ、俺等似た者同士だとは思うんだよ


でもよ、絶対仲良くなれない。お互い歩み寄りたくなんかない


なのに、こうして並んで一服するのも、お互いプライドを譲らずに本気で殴り合ったのも


お互い、協力して肩並べて敵と戦うのも


全部、全部、俺等の間にはツナがいるからなんだ


だから、ツナ。俺等を離したくないなら



俺等の間から、いなくならないで


「なぁ獄寺」

結局、さ


「お前ってさ、昔っから何も変わんねぇよな」


俺が火を消したら、獄寺は2本目の火を点けた


「……………テメェもな」


余裕な顔
俺も2本目の火を点けた


「なぁ、山本」


あぁ、でもやっぱり


「……………俺等で、ずっと10代目をお守りしていこうな」





「─────ああ、当たり前だ」

──────大人になったお前もムカつく


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あとがき
元祖サンド書きました!!
何て言うか、近いのに、近過ぎてこれ以上縮まることの無い距離感みたいのを書きたかったんです

途中で山本が言ってる口内が腫れているせいか〜は獄寺のこと。そして自分がしかけたのに人のせいにして逃げ出す自分がかっこ悪いと言ってます。ここちょっと分かりにくいッスねorz

ツナがいるから二人は一緒にいられると思うんですよね……でもお互い結局、お互いを嫌いだったらいいなとか思ってしまう

綺麗な言葉で言えば、お互い良きライバル


2011.06.11



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