ご褒美


「お………おわったあああぁ…っ」


今日は初めての任務でした
漸く終わりました


あぁ、正確には。1人の任務が初めてでした……

「怖かった…!!」

今でも心臓がばくばくしている。他の人達はこれ以上の任務を1人で普通にこなすんだから………化け物なんじゃないのあの人達…

そんなことを本気で考えるくらい1人きりの任務は怖くて大変だった

「………ひとまず次の任務は簡単なものにしてもらおう…」





「只今帰りました」

「あっ、お帰りランボ。お疲れ様」

帰ったら迎えてくれるのはボンゴレの素敵な笑顔。あぁ頑張ってよかった生きて帰ってきてよかった…!!

「初めての1人の任務どうだった?」

「すごく怖かったです」

隠すことなく堂々と即答した

「なので次の任務は簡単な」

「よっし!!泣かずに帰ってきたから次はワンランクアップしよう!!」

「いや、あの、次は簡単な」

「大丈夫!!ランボ強くなったもんねっ!!ねっ!?」

「……………はい」

この人には本当に負ける…
今思い出すと恥ずかしくなるくらいこの人にちょっかいを出していた自分が信じられない

「でも、ランボが今日頑張ってきたのは事実だからご褒美をあげる」

ご褒美……!!

既にこの2人きりで話せる瞬間とか眩しい笑顔とかその時点で生きて帰ってきた甲斐があったのに!!更に!!それ以上!?

ままままさか…


『ランボ、今夜は一緒に寝よう…俺を好きにしていいんだよ?』


「喜んで!!!!!!」

あぁ………俺。生きててよかった…


そして約束の夕食後。それまでに俺は風呂を済ませ且つ、勝負時に使うとっておきの香水やらなんやらと準備万端だ

「……………失礼しますっ」

「あっ。時間ぴったりだねぇ〜」

…………お茶を入れている…?

「ランボは伊達男だけど曲がりなりにも紳士を目指してるよね。ちゃんと時間守るの獄寺君とランボくらいだ」

それは………あなたに早く会いたいからなんですがね…

しかし…な、何だろう。この妙なまったりした雰囲気

「もうすぐで準備終わるから座って待ってて」

そわそわしながら座ること数分後

「はい、任務お疲れ様」

目の前に置かれたのは、とてもいい匂いがする紅茶ととても彩りが綺麗なキラキラなデザート

「ランボはキラキラピカピカーってずっと言ってたからなぁ」

何年前の話ですか…!!

「大好きな葡萄のタルト。初めてこれ見たときにさ、あ、いつかランボに買っててやろうって思ったんだ」

途端に自分が恥ずかしくなった
何を期待していたんだろう。こんな俺なんかに

タルトを見て、俺なんかに買ってってやろうなんて考えてくれた優しいあなたに

「……………素敵なごほうびでずぅ」

「えっ!?何で泣くの!?」

思わず涙がこぼれてしまった

純粋なご褒美に。俺のためだけに用意してくれたこの空間と時間と紅茶とタルトが嬉しくて

「ありがとうございますっいただきますっ!!」

食べようとした瞬間





ぼふんっ!!!!!!





「………………」

「………………」

「………………」

「……………え。デザート…ランボさんの…タルトは…」

「アホ牛………てめぇがこの場めちゃくちゃにしたんだろうが」

「いや、獄寺のダイナマイトなのなー」

「るせぇっ!!黙ってろ野球馬鹿!!」

そこはとても懐かしい場所で

目の前にあったはずのタルトは夕御飯だったのかハンバーグの残骸

そしてハチャメチャな部屋と化していた

つまりは…………そういうことだ…

「ランボさんの…タルト………」

5歳の俺がぶっ放したのだろう。と言うことは俺のタルトは………

「テメェにやる食いもんなんかねぇよっ」

若き日の獄寺氏の言葉が決定打となった

「うわあああああああああああぁん!!!!!!」

「ちょっ!?ランボ!?」

「相変わらずヘタレだな」

「アホ牛は10年経ってもアホ牛だ」

「はははっ俺等と一個しか違わねぇのに」

次々と好き放題言ってきて…!!

逃げると言う手段を取ったことも何か色々悔しくて誰も来なさそうな屋根の上に逃げた

どうせすぐ戻るんだから……5分間ここにいよう



5分後

あ、あれ……あ、きっと今は数秒の差できっとまだなんだ


10分後

じ、実は計算ミスとかでまだ5分経ってないんだ。ほら、何時にここ来たかちゃんと分かってないし


数十分後

………………………これ、なんてお約束…


「……………あ、ランボやっと見付けたっ」

為す術もなくどうしたものかと頭を抱えていたら下の窓からボンゴレがひょっこり頭を出してきた

「ボンゴレ……」

「ガキのランボがまだ帰ってきてないからまた故障でもしたのかなぁって思って………よいしょっと…わわわっ」

危ないっ!!
直ぐ様手を取ったら


ドシーン!!!!!!


「ててて………」

俺ごと落ちた………
ん…何か……下にある…?

「うわあああああぁっ!?すすすすすみませんっ!!!!!!」

下にあったのはボンゴレの小さな体。押し倒してる形になっていた

あぁ……10年前のあなたはまだ小さい…今は、細いのとか変わらないのに俺より少し身長が高い

きっと、いつか抜かすと信じてるけど

「あははーごめんね…ランボに降りてもらった方がお互い無事だったかも」

うまい具合にベランダに落ちて、そのまま中に入った

「あ、よかった。中身は無事だ」

何かを手に持っていた
テーブルに出したその何かは

「…………………」

「さっきさ、タルトってやたら呟いてただろ?これだけ時間経ってると多分、ガキのランボが食べちゃってると思うんだ」

コンビニのケーキ

「どんなのがいいか分かんなくて…と言うかこの時間だから何も無くてティラミスになっちゃった。タルトですらなくてごめんね」

さっき、ボンゴレがくれたのとは格が全く違う安いケーキ

「今のお前から見たらショボく見えちゃうかなぁ」

優しく、苦笑いをするあなた

ぼやきでしか無かったタルトの単語を拾ってくれて

わざわざ買いにまで行ってくれた

よくよく考えると、タルトが食べれないのが嫌だったんじゃない

「本当………ショボいですよ。らんぼさん…もうおいしいものしか…たべないんだから」

まだ、あなたへの気持ちに何も気付いてないガキの俺に

「……泣きながら言う台詞かよ〜。ちゃんと食べてくれてるし」

あなたからの特別なタルトを渡すのが嫌だった

泣きながら食べ続ける俺の髪を優しく撫でて、そんなところは昔っから変わらない

「…………………きょうはなんでいれかわったんでずが…」

そうだ。そもそも何で入れ替わったんだ……入れ替わりさえしなければ俺は今頃…!!

「ええーと………今日俺がハンバーグ焼いたんだけどさ。ランボの置いて獄寺君の置いたらそっちがいいって喚き出して……まぁ、獄寺君だから譲ってくれるわけもなくて」

いつも通りの下らない喧嘩だった………俺食い意地汚い…獄寺氏は大人気ない…!!

「で?何でランボは今日のタルトがそんなに大事だったの?」

まさかそこを突かれるとは思わなかった……あなたから貰ったタルトだからなんてとても言えなくて

「………今日が、初めての1人の任務で。無事成功したご褒美だったんです」

あまりにも理由が子供らしくなってしまい隣で彼は笑っていた

そして気付いた。これは偶然ではあるけれど、今この空間はあなたと2人きりで、あなたが俺のために買ってきてくれたケーキを食べて

あぁ………何だ。俺、ちゃんとご褒美貰ってるじゃないか

「あっ、ランボ。やっと笑った!!」

頭を、ぽんっともう一撫でされて

「初任務、お疲れ様。今度はもうちょっといいの買ってやるからな」

その言葉をいただいたとき


ぼふんっ!!!!!!

「あ、おかえりランボー」

同じ笑顔をしてるけど少し大人びたあなたがいた

「た、只今帰りました………」

ふと視線を落とせばやっぱり残骸となったケーキがあった。挙げ句の果てには飴玉のゴミすら……おおぉ…恥ずかしい…

「10年前の俺からのショボいティラミスは美味しかった?」

思わぬ言葉に思わず顔を上げてしまった

「え、え、え、あの…」

「そして。あの頃よりもうちょっといいタルト」

差し出されたのは過去に行く前に見たあなたからのご褒美

「えっ!?」

何でもう1つ出てくるんだろう。目の前の残骸は明らかなのに

「初任務のご褒美…だったんだろ?あぁ、今日のことだなぁって思って2つ買ったんだ。案の定ガキのお前はすぐ食べちゃうし」

まさか…10年前のことを覚えていたんだろうか……俺達はしょっちゅう入れ替わるから印象なんて大したものが残るとは思えないのに

「初任務、お疲れ様。10年前の約束っ」

俺は、しあわせものだと思う
10年前のあなたからも、今のあなたからもご褒美をいただいた

あぁ………俺、また明日から頑張ろう

有り難くいただいてる中、ボンゴレは紅茶を入れ直していてくれて

「きみーはだーれだいっぼくーはらーんぼ♪ぼくーはだーれだいっきみーはらーんぼ♪」

「随分と懐かしいものを歌われますね…」

もはや10年前の俺すべてが黒歴史だ

「んー。だってお前いつも歌ってたじゃん。耳に残っちゃうんだよね、ナイスな子牛のボンバーヘッド!!」

髪の毛は……あの頃より落ち着きましたから…っ!!

「………そういえば。その曲は昔誰かに教わった曲なんですよね…あれは誰だったんだろう」

思い出そうとしてもいかんせんガキの頃の記憶なんてのはロクに残ってない

「………………誰だったんだろうね」





*おまけ*

ぼふんっ!!!!!!

帰ってきた………

「あー!!ツナいけないんだぁ!!ランボさんに内緒でケーキ食べたんだなっ!?」

きたあぁ…!!うるせえぇぇ!!!!

「ランボさんも!!食べる!!ケーキ食べる!!キラキラのぴかぴかあぁっなケーキ食べる!!」

もう何言ってんのかわかんねぇよ…キラキラのピカピカなケーキって何。花火でも刺さってんのかよっ

「………ランボはデザート食べてきたんじゃないのか?」

ぎっくうっ!!ってした顔。図星だな…大人ランボもかわいそうに……

「そしたらケーキは明日だな」

「たべてないもんねっ!!ランボさんケーキたべてないもんねっ!!だからはやくだせー!!だせよつなああぁ!!!!」

うるさい…!!

「ほんとうだもんねっ!!あのひとゆめのせかいだっていってたもんねっ!!」

あの人って誰だろう………
シカトし続けていたら泣き出した。あぁ、もう……

「ランボ。時間見てみろよ。もう寝る時間だろ?ケーキは明日絶対買ってきてやるから。な?それに、もうお腹いっぱいじゃないのか…?」

何だかんだいい匂いがする。恐らく何かしら夕御飯も食べてきたに違いない。残すのがオチだ……実際に結構遅い時間だし

「ぜ…………ぜったいぜったいぜーったいだもんねっ!!!!!!」

「はいはい。ほら、寝る準備しろよ」

痛いとこをつけば案外おとなしく言うこと聞いてくれた

本当、こいつがあれになるなんて信じられないよなぁ……

「きみっはだっれだいっぼくっはらんぼっ♪ぼくっはだっれだいっきみっはらんぼっ♪」

「……………何その歌」

「さっきゆめのなかでおしえてもらった、らんぼさんのうただじょー!!へへへーんいいだろっ」

いや、別に羨ましくはない…
しっかし変な歌だな………

この変な歌はやたら耳に残って俺もすぐ覚えてしまった

「「なーいすなこーうしーのぼーんばーへーっど♪きみーはだーれだいっぼくーはらーんぼっぼくーはだーれだいっきみーは………」」



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あとがき

ランツナを書いたのは1年振りくらいでしょうか…

私の中で一番のポイントは歌を作ったのが誰かってことだったりします

子供ランボは10年後ツナに教えてもらったけども、10年後ツナが知ってた理由は小さい頃からランボが歌っていたから

そしたら最初に作ったのは誰なのかな…って感じにしたかった。成り立ってないのは仕方無い←

本当は子供ランボの話も書きたかったんですがいかんせん文字数が…け、決してネタが無かったわけでは…ごにょごにょ


2011.10.07



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