舞台
骸ツナ山とか書いた割りにはラブ要素無い
若干ヤンデレ
若干死ネタ
だと思う
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道化師
それは笑い者になるだけの人
とてもとても滑稽な存在
コンコン
「入りますよ」
「いいよ」
とっくに耳に馴染んだ声変わりした低音
最初は気味が悪かった。しかし段々、歓喜へと変わった
あぁ、彼は成長している
あの見た目のまま。華奢なまま。線が細いまま。綺麗なライン
しかし強い意思のある目。誰にも屈しないであろう目。光のある目。そして、常に自分が優位であるとでも思い始めたのか…恐れることが無くなった目
僕は、僕は
「失礼致します」
そんなあなたが欲しい
「お。今回のパートナーはこいつか」
先客がいた。この口振りからどうやら二人組の任務…と言ったところでしょうか
「うん、そう。て訳で骸。今回は山本と一緒だから。喧嘩しちゃだめだよ」
昔から変わらない人当たりのいい笑顔
「大丈夫だってツナー。ほら、俺チームワークある奴だから」
どちらが?
「はいはい」
どちらも
昔から変わらない仮面を被った笑顔
どちらが?
「ツナ。俺だぜ?俺がどういう人間か知ってんだろ?ツナの為に、何でもする人間なのな。それに……ずっとフラれてるけどツナのこと愛してる人間だぜ?だから信用しろよ!!」
「そして今日もフるけどね。でも俺も山本のこと好きだよ。少なくとも骸よりは」
どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか……
詐欺師
それは人を騙す者
一般的に、悪者
「……………クフッ」
「ん?」
あぁ……いけない…
「クフッ、クフフフフ…クッハッハッハ!!!!!!」
笑いが止まらない
「何だよー気持ちわりぃな」
笑いが止まらない
何故か?
何故かって!?
「クハッ!!あまり僕を笑わせないでくださいよ、山本武」
怪訝な顔をする彼
仮面を外した、敵意を全て僕に向ける鋭い視線
「どういう人間かだって!?沢田綱吉の為なら何でもする人間だって!?」
それどころか
「愛してると!?彼を!?その眼差しとその空気で!?」
滑稽だ。何て滑稽だ
反吐が出る
「クハハハ!!あなたはとんだ詐欺師ですね。その笑顔で、昔から何ら変わらない笑顔で。昔から変わらない狂愛を持ったまま仮面を被るのですから」
ほら
あなたのその歪んだ笑顔
あなたが纏うその殺気
何も変わらない
「いやぁ、別に嘘は言ってないのな?俺はツナの為なら何でもするし、ツナのこと愛してるぜ?」
あぁ、そうでしょうね。愛してはいるでしょうね
「だが……僕には分かります。あなたの愛し方が狂っていることを」
「それは自分が狂っていることも肯定か?」
お互い、気付いてる
愛し方が、欲しがり方が、同じだから
「えぇ。僕もあなたも沢田綱吉を手に入れたい。何よりも愛しい彼の命を自分のこの手で断たせることによって彼の命を全てを手に入れたい」
僕だって、大分彼を騙してきていますよ
笑顔を繕って、言うことを聞いて、問題を起こさないようにして
少しずつ距離を近付け、少しずつ警戒心を解かせていった
「ここに、二人の詐欺師がいます。そしてその二人はある一人の青年を騙しています。その青年は二人を信用しきっている。二人の掌で転がされている。正に道化師。これはとても素敵な喜劇だと思いませんか?」
体が疼く
早く、早く彼を手に入れたい
「終止符を打つのは…どちらの詐欺師でしょうね?」
「さぁな………あぁ、ちなみに。その喜劇のキャストを変更しなきゃなのな」
変更…?何を言っているのでしょうか
「……………詐欺師は、道化師と思われてる青年で。道化師は自称詐欺師の二人。青年はとっくに詐欺師の目論みに気付いている」
なんだ…と…?
「な…っ、一体、どういうことですかっ!?我々が騙されているとでも…?踊らされてるのは我々だとでも言うのか!?」
そんな…馬鹿な…
「………ツナはすげぇぜ、本当。生殺し状態。自分を殺そうとしてると分かってるのに側に置く。近付いてくる。利用する。だが、手を出させない。俺が気付いたのは割りと最近だけどな。骸は…気付いてなかったわけだ?」
滑稽なのは
醜く踊らされたのは
僕だと…?
山本武は気付いていた。僕は何も気付かず彼の為に笑顔を振り撒いていたと…
「…………クフフ」
あぁ………
「クフッ…クフフ……」
体が、疼く
「彼が気付いてるならもう隠す必要はありません。彼が気付いてるなら僕はもう本当の自分しか見せません」
何かのリミッターが外れた
体が疼く
彼を求めて
あぁ………彼を手に入れたい
彼を刺して、彼を切り開いて、彼を裂いて、彼の温かい血を浴びて、彼の温かい中身を抱いて、彼の愛らしい頭を抱き締めて、彼の冷たくなった唇に口付けたい
その前に無理矢理抉じ開けるのもいいかもしれない。無理矢理抉じ開けて、余裕な顔を崩して、悲鳴を、絶望を、懇願を聞きながら、見ながら、ぐちゃぐちゃにして、ぐちゃぐちゃにして
想像しただけで……絶頂を迎えそうだった
「………僕は明日。彼に告白しに行きます」
「はいはい。あぁでもあとこれだけは覚えておくのな。喜劇のキャストは…三人じゃあ無い」
コンコン
「入りますね。沢田綱吉」
マナー上、ノックだけ済まし、返事を待たずに部屋へと入る
いつも通り、書斎机に堂々と座る一人の青年
「今日は、あなたに………僕の想いを」
目を合わせたまま
「告げに来ました」
一歩を踏み出し、三叉槍を彼へ向け
ズガンッ!!!!!!
頬を、熱い何かがかすった
あと一歩踏み出せば槍の先は彼の喉へと届いたのに
彼は、微動だにしていなかった
「………やっぱ俺はさ。色んな奴等に命を狙われる訳じゃない。俺は怪我したくないし痛いの嫌だし死にたくない。だからマフィアになりたくなかった」
合わせた目は笑っていた
「でもね、アイツが俺を守ってくれるって言ったから。何だか安心できちゃった」
彼のずっとずっと先を見据えれば
ハットを目深に被った……
「アイツは………敵味方関係無く、俺の命を狙った奴を排除してくれるんだ」
そう言った彼は
とても素晴らしい笑顔を放ち
遠くの彼は
とても素晴らしい笑顔と…
「────────っ」
あぁ
一番の…
詐欺師は………
ズガン………ッ
遠くに銃声が聞こえた
二発目の銃声
あぁこりゃあ確実に殺られたな
やっぱ…味方も戦力も関係無しって訳か
アイツを殺りに行った奴はもう一人のキャストに殺られた
俺も………アイツをこの手で…ヤりたかった
あの細い首を絞めて……か細い声で名前を呼ばれたかった
「……………ヤんなくてよかったのなぁ」
俺に、一欠片の人間らしさが残っていてよかった
吸っていた煙草を、奴への手向けの意味で捨て
「……………一番の詐欺師はアイツを惑わした彼奴だ。そして…一番の道化師はお前だよ」
もう一本、煙草を点けた
こうして………自称詐欺師の喪失により
喜劇の幕は閉じた
「……………めでたしめでたし」
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あとがき
何だこの話
おかしいな……私はシリアスな骸ツナが書きたいと思ったんだ
それから山本に対して「嘘つきなあなたは本当に滑稽ですね!!馬鹿ですね!!可笑しすぎて反吐が出る」とか言わせたかった
そして山本のリミッター解除させてツナをぐちゃぐちゃにしちゃってそこに付け入る骸みたいな話が書きたかったんだ
どうしてこうなった。只の骸フルボッコな話じゃねぇか。本当すみませんでも変態な骸書くのがすげぇ楽しかったですはい
ちなみに。詐欺師はペテン師と読んでほしいです。片仮名使いたくなくてこうなりますた
2011.09.16
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